そもそもSELENE-Bとはどのような計画か?
〜その生い立ち〜

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はじめにお断りしておかなければならないのは、SELENE-Bとはまだ予算が付いて確定したミッションではないということ。現在、どのようなミッションにするのかの大枠が検討され、提案されている段階にあるということです。その為、私がこれから書こうとしているミッション内容は、今後大きく変わることもあり得ます。

まず、ミッションが提案されるに至った経緯から説明しましょう。元々のスタートはSELENE計画から始まります。(その前に何故SELENE計画が始まったのかという話も別にありますが、それはSLENE-Bを説明するよりもさらに書き上げるのが難しいので今回は割愛(^_^;)SELENEの初期計画の頃の絵を見るとわかりますが、SELENEは当初はおよそ1年にも及ぶ月周回軌道からの探査の後に着陸機をおろすという遠大な計画を持っていました。しかし”2000 年8月30 日の宇宙開発委員会において、”開発リスク低減のため、月着陸実験を分離し、当面は月の周回観測と障害物検知技術等の開発に資するデータ取得を優先して実施することとし、月軟着陸実験については研究を十分に行って技術開発の目途を得ることとすることが認められた”(以上、ISAS2001年年次要覧概要より抜粋。宇宙開発委員会の議事録は2001年度以降はこちらから見ることができますが、2000年度のは残念ながらネット上では見れません;)。その結果、SELENEは現在ではこのような探査機を、このような段取りで飛ばして探査を実施することになっています。
この宇宙開発委員会では、”月軟着陸実験については研究を十分に行って技術開発の目途を得ることとする”と言うことも指摘されているため、ここにSELENEから分離した形で”軟着陸実験ミッション”としてのSELENE-B計画がスタートしたわけです。

現在SELENE-Bでは”軟着陸機とローバ”による探査が検討されています(詳細は後記)が、実はこれ、もともとSELENE-2に向けて検討がされていたものです。SELENEでの着陸探査機は、純粋に着陸実験をするためだけの機構でした。その為、イメージ図をみてもらうとわかりますが、アポロ探査機の”脚の部分だけ”見たいな感じになっています。SELENEがSELENE単発で終わるのか、SLENE-2,3と続くべきなのかにかんしてはいろいろと意見もありますし確定的ではありませんが、SELENEを推進している人達の念頭には2,3と続けたいという意識はもちろんあり、1999年に国立天文台でSELENE以降の月探査計画のためのシンポジウムが開催されました。案内がまだ残っていますが、こちらでは”次期月探査シンポジウム「セレーネ2号機をめざして」 開催のご案内”となっているのに対して、こちらでは単に”月周回衛星(SELENE)以降の月探査活動についてのシンポジウムを次のとおり開催します”と述べるにとどめてSELENE-2という表現を使っておらず、さらにこのシンポジウムの集録を見ると”次期月ペネトレータミッションLUNAR-B”という表現があったりして、このあたりは関係者の微妙な思惑や関係が見て取れて面白いのですが、今回は割愛(^_^;
話を戻しますと、この集録にも出てきますが、実はSELENE-Bで現在やろうとしていることはこのSELENE-2で検討されていたことが主になっています。すなわち着陸探査計画だけが分離されたので、それではそこにもうちょっと肉付けをして、ローバを搭載してSELENE-2でやりたかったことを先にやってしまおう、というのがスタートでした。もっともSELENE-2では、着陸実験は既に終了した後の計画として組まれていましたから、工学試験ではなくて純粋に理学ミッションとして検討が進められていました。これがSELENE-Bに前倒しされたわけですから理学ミッションではなくて工学ミッションとしてのスタートとなってしまいました。その為、理学としてはちょっと不自由であることは事実です。<だってミッションの一番の目的は、工学的な目的を達成することですから。しかしそのような不自由さを鑑みても、次のSELENE-2は実現されるかどうかもわからない訳で、乗れる船に乗りたい!という動機からこの不自由さを受け入れることにしたわけです。

しかし以上のことからもわかるように、”そもそもSELENE-Bで検討されているサイエンスの内容は、理学ミッションとして実施されても十分にやっていける”ことを前提に考えられたミッションなのです。もちろん提案内容がそのレベルに達していないことはあり得ますが、提案者としてはそういう意図を持って作成したプランである、ということです。ちなみにこのシンポジウムで私も発表していますが、これなんかはそのままSELENE-B計画の中で検討が進められています。

 

閑話休題:
どーして日本ではアポロ計画のように長期展望に立ってSELENE1,2,3、あるいはLUNAR-A,B等のようにシリーズ化された計画が考えられないのでしょうか?これ、実は日本の予算システムが大きく影響を与えています。日本の国家予算は、”単年度会計”なんです。すなわち、今年度の予算と来年度以降の予算は全く別物。今年度の予算の議論と来年度以降の予算は、一緒に議論されることはありません。というわけで、結局何年にもわたって予算が必要となるようなシリーズ化されたミッションは実現が難しいのです。シリーズものというのは、最初の一つだけじゃなくて全体としてみれば非常に大きな意義がある、というのが特徴だと思うのですが、単年度予算では”この計画が実施されたらその後にもっと有意義な結果が得られるんですよっ!”と説明しても、”先のことはわからないから、今回の計画だけで十分な意義がないとダメだよん”と言われてしまっておシャカになってしまうのであった。なので、日本では”結果としてシリーズもの”になることはあっても、”最初からシリーズ全体で考える”なんていうミッションは非常に立案・成立させにくいのです。この辺は次期月探査シンポジウムでも話題に上りました。

2003.8.13.

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