1999/08/14 公開
2002/03/08 加筆
担当:カルネアデス


機動戦艦ナデシコ

これから (仮称)


#09 『生体実験』


ホシノ・ルリ「ナノマシンより小さいもの?」

マキビ・ハリ「ナノサイズ以下の機械ですか!?」

記憶喪失「そうだよ。発案者は僕なんだ……単純にピコマシンと呼称したけどね。
               実験はうまくいっているよ……確実に悪性ナノマシンを排除してくれている。」

マキビ・ハリ「実験って……まさか!」

ホシノ・ルリ「記憶喪失さん!!」

記憶喪失「そう、二人の想像の通り被験者であり、発案者でもあるんだ。
               ナノマシンが暴走している僕が名乗りでたんだ。他の人には頼めないからね……。」

そこで2人にある疑問が浮上する。

ホシノ・ルリ「でも……。」

マキビ・ハリ「やっぱりおかしいですよ、なんで跳べるんですか?」

いくらA級ジャンパーといえども、C・Cと言う名のボソンジャンプのトリガーがないと出来ないのだ。

記憶喪失は別に動じた様子もなく辺りを見渡しながら……。

記憶喪失「ここの遊園地はネルガルが経営していて、園内にはC・Cの粒子が散布されている。
               このピコマシンはC・Cの粒子を取込んで、悪性ナノマシンに取り付きC・Cの結晶になる。

               アコヤガイの中で真珠が作られるのと同じ原理でね。

               C・Cはボソンジャンプすると無くなってしまうから、ナノマシンも無くなる……と。
               もう少しでこれも完璧なものになる、そうすれば 『彼』 も……。」

『がたっ』

ルリがその場から走り出す。

マキビ・ハリ「あっ! 艦長……。」

記憶喪失「ルリちゃん!  ……ぐっ!? ごほごほ……。」

記憶喪失の異変に気付くハーリー。

マキビ・ハリ「大丈夫ですか……!!?」

記憶喪失の手のひらに血を見るハーリー。

マキビ・ハリ「記憶喪失さん!!」

記憶喪失「だいじょうぶ……大丈夫だ……だから誰にも言うなよ! 男同士の約束だ!」

強い意志を秘めた目に見つめられてハーリーは約束を誓うのだった。



マキビ・ハリ「さっきのあれ、副作用なんですか?」

記憶喪失「いや、違うよ。 投薬が遅かっただけだろう。
               先に身体の方がやられただけさ。」

マキビ・ハリ「……アキトさんもですか?」

記憶喪失「彼の場合は身体にも細工をされたみたいだから、それなりの抵抗力はあると思う。
               5感は機能していないみたいだけど……。」



記憶喪失「マキビ・ハリ君。」

マキビ・ハリ「じっとしてなくて大丈夫ですか?」

記憶喪失「ルリちゃんの事、好きかい?」

マキビ・ハリ「いっ、いきなり何ですかぁ……。」

真剣な眼差しでハーリーは見つめられている……。

弱いんだよな、こういう目……。

マキビ・ハリ「ええ、好きですよ。」

微笑む記憶喪失。

マキビ・ハリ「ひっどいなぁ、笑うなんて……。」

記憶喪失「え!? 笑ってた!? やっぱり疲れてるかな……。」

重苦しい空気が二人を覆う。



マキビ・ハリ「…………。」

記憶喪失「…………。」



その重苦しい空気をはねのけるように記憶喪失がきりだす。

記憶喪失「さて、もう気持ちが落ち着いた頃かな? 迎えに行かないとね。」

マキビ・ハリ「大丈夫ですか?」

ハーリーの心配を聞かなかったことにする記憶喪失。

記憶喪失「ルリちゃんはアキトに恋しているのかもしれないよ……。」

マキビ・ハリ「…………。」

記憶喪失「敵は強敵だぞ!」

マキビ・ハリ「わかってますよ! そんなこと……。」

記憶喪失「そうか……では、 『白い王子様』 。王女様を追い駆けてね。」

うやうやしくおじぎをする記憶喪失。

マキビ・ハリ「でも……。」

記憶喪失「僕は大丈夫だって……。」

目を閉じるハーリー。そして……。

マキビ・ハリ「行ってきます。」

記憶喪失「ああ、いってらっしゃい……。」

駆け出すハーリー。
10mほど進んで立ち止まり、記憶喪失の方に走ってくる。

記憶喪失「……?」

マキビ・ハリ「あ、これ飲んでください、では行ってきます。」



ハーリーが見えなくなってからベンチにもたれかかる記憶喪失。

記憶喪失「若さか……。」

イネス・フレサンジュ「もう、無理しないでって言ったのに……。」

顔を起こす記憶喪失。
目の前に白衣の女性が立っている。

記憶喪失「イネスさん……。」

ベンチに座るイネス。

イネス・フレサンジュ「また跳んだのね……。」

記憶喪失「ええ……今日はちょっと走る気力がなかったもので……
               そうそう、これいりますか?」

記憶喪失の手にはジュースがにぎられている。
ハーリーが置いていったものだ。

イネス・フレサンジュ「そうね、いただくわ。」

記憶喪失「……また笑ってしまったようです。」

イネス・フレサンジュ「そう……あらっ……。」

イネスにもたれかかる記憶喪失。

イネス・フレサンジュ「奥さんに見せられないわねぇ、こんな所……。」

記憶喪失は気にした様子もなく―――
気にした様子をしたくても疲れているから出来ないのかもしれない。

記憶喪失「……イツキならそこでずっと見てますよ。」

イネス・フレサンジュ「なぁ〜んだ、知ってたの……。」

つまらなそうなイネス。

記憶喪失「これでも昔、天才パイロットって呼ばれていたらしいですから……。」

イネス・フレサンジュ「そう……。」

記憶喪失「彼女には心配ばかりかけていますよ……。」

イネス・フレサンジュ「もうすぐ……もうすぐ昔の生活に戻れるわ……。」

記憶喪失「…………。」

イネス・フレサンジュ「? 記憶喪失君?」

記憶喪失「……ぐぅ。」

イネス・フレサンジュ「あらっ、こまったわねぇ……。」

物陰から様子を伺っているイツキにちょっと気が引けるイネスであった。

to be continued ...


なぜかあとがき

今回、2話いっぺんに上げようとみたら、
htmlに変換してなかったので焦りました(笑)

今日はイロイロ自転車で走り回りましたので……。

単位ピコは当時(1998/10)ではそんなに聞かなかったのですが、
医療の発達等でニュースで飛び交ってしまった言葉です(笑)。
前から使われていたのかもしれませんがね。

会社で使っている部品の単位でピコというのがあったので使ってみました。


2000/03/13 加筆

2000/02/18 に Yさんから掲示板に書き込みを頂きまして、
修正致しました。 ありがとうございました m(_ _)m

因みに修正前のものは、こちらに置いてあります。


2002/03/08 加筆

アヤコガイ → アコヤガイ

2002/03/06 に Aさんから掲示板に書き込みを頂きまして、
修正致しました。 ありがとうございました m(_ _)m

因みに修正前のものはないっす。文字がテレこなだけですので。


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