PairProc 仕様書
1998.3.2
河村 進
1. はじめに
一対比較法とは、何個かの比較したい試料(a,b,c,.)の中から2つずつ取り出し、たとえば
- a-bではどちらが「明るい」イメージを与えるか?
- a-cではどちらが「明るい」イメージを与えるか?
- a-dではどちらが「明るい」イメージを与えるか?
- ...
- b-cではどちらが「明るい」イメージを与えるか?
- b-dではどちらが「明るい」イメージを与えるか?
- ...
- c-dではどちらが「明るい」イメージを与えるか?
- ...
を被験者に答えさせるものです。左右効果(右にaが来たときと、bが来たときを比較)、前後効果を無視すれば、比較する回数は、試料の数をnとしたときn*(n-1)/2となります。
このプログラムでは試料の数nは4〜9まで、左右効果を考慮したn*(n-1)回の組み合わせを、一つのシリーズとして処理することはできません。(別のシリーズとして処理することは可能です。)
この一対比較法では、ある二つの組み合わせ a-b に対して、「どちらも「明るい」イメージを与えない」という判断は許していません。したがって中間的な判断を許すイメージ調査には対応していません。
アンケートではたとえば「明るい」だけでなく、「感じのよい」「重い」イメージなど、複数のイメージについて同時に答えさせることが可能です。一度に答えさせることのできるイメージの数は25個までとしました。これは単に画面のレイアウトの問題です。
一つのディスクには複数のシリーズを保存できます。ディスクに保存可能なシリーズの数については特に制限はありません。
実際のアンケート用紙を出力するフォームがありますので、そちらをご参照ください。
[excel97]アンケート用紙の印刷フォーム
なお、このフォームに添付されているマクロはB4(を想定した大きさの紙)を4分割し、順にアンケート項目を記入して印刷するものです。実行すると自動的に印刷が開始されますのでご注意ください。
入力したデータに対して、「より「明るい」イメージを与える」試料に1点、他方に0点を与えて集計します。集計されたデータは100点満点、および平均標準偏差基準化得点に換算して出力できます。平均標準偏差基準化得点とは、Thurstone Vを一部変形したもので、それぞれの試料の得点の標準偏差の代わりに得点の標準偏差の平均値を使って正規化する方法で、京都大学大学院農学研究科森林科学専攻、生物材料設計学研究室で考案されたものです。詳しい理論について知りたい方は下の文献をご覧ください。
仲村匡司, 増田稔: "イメージ調査データの簡易処理法", 木材工業, 50(1), p18-21 (1995)
集計できる人数は100人までとしていますが、これは単に研究室での実績に基づいたものです。
集計に際しては、このプログラムは男性と女性で分けて入力するようになっていますが、これは古いバージョンとの互換性を考慮したものです。男性と女性の区別はしないという場合、最初から「混合」に入力することもできます。また、入力された複数のデータファイルをまとめることは可能です。
それぞれの試料の「明度」「周波数」などの物理量と、実際のイメージとの相関を相関係数、あるいはグラフの形で確認することができます。一つのシリーズにつき25個までの物理量が設定できます。
利用可能なコンピュータは
- Windows95, Windows NT4.0以上が利用できるコンピュータ
- (普通のコンピュータなら当たり前ですが)フロッピードライブ/リムーバブルディスクが利用できること。接続されてなくても動きますが、使い勝手は悪くなります。
集計されたデータやグラフを他のアプリケーションで利用できるよう、クリップボード、テキストファイル、HTMLファイル、リッチテキスト、ビットマップ、EMF(エンハンスト メタファイル)などで出力できるようになっています。またWord97やExcel97を直接起動して転送することも可能ですが、遅いコンピュータではかなり時間がかかるようです。なおWord97やExcel97へ直接転送する機能は、仕様変更により将来のWordやExcelでは利用できなくなる可能性もあります。
2. セットアップの方法
特にインストーラは用意していません。適当なフォルダを作って、ダウンロードしたファイルを入れてください。pairwin2.iniについては4. その他をご覧ください。
3. 簡単な使い方
このプログラムは一連のアンケートで一つのディスクを使用します。データファイルのサイズは小さいので、フロッピーディスクを利用されることをお勧めします。
フォーマットされたディスクを用意し、ドライブを選択したのち「新しいシリーズの作成」を選びます。画面の指示に従って必要項目を入力すると
-male
-(シリーズ名)
-female
-(シリーズ名)
-mix
-(シリーズ名)
-order
-paper
-physical
-(シリーズ名)
というフォルダが作成され、さらに試料の数や呈示順序などの情報がorderフォルダに、質問するイメージの名前がpaperフォルダに保存されます。
アンケートの集計には「データ入力/修正」タブを選択します。シリーズ名、性別、ファイル名を設定した後「新規入力」を選択すると、入力モードになります。
データ入力には入力フォーム上をマウスの右、左のボタンでクリックするか、または4,6キー、あるいはz,xキーを押すと丸印がつきます。一画面入力し終わったらリターンキー、あるいは「次へ」ボタンを押すことで、次の画面に進みます。
データを入力した後「終了」を押すと、
「すべて保存して終了」
「最後の被験者(入力中)のデータだけを破棄して終了」
「何もせずに終了」
という選択項目が現れます。このプログラムではある被験者のデータを入力途中で保存することができません。(これは古いバージョンとの互換性を考慮したものです。)被験者のデータが最後まで入力されていれば「すべて保存して終了」できます。最後の被験者のデータは入力途中だが、ひとり前のデータまでを保存して終了したいという場合は「最後の被験者のデータを破棄して終了」を選びます。保存せずに終了したいときは最後のボタンを選択します。
データファイルは男性ならmaleの中の(シリーズ名)フォルダに(ファイル名).datという名前で保存されます。同様に女性ならfemale,混合ならmixの中に保存されます。
複数のデータファイルをまとめるには「データ集計/出力」タブを選択します。シリーズ名と性別を設定するとファイルのリストが表示されますので、必要なファイルを選択して「データの結合」ボタンを押します。まとめられたファイルはこの順序で被験者のデータが並びますので、被験者のデータの並べ替えが必要なときはボタンを押して順序を入れ替えてください。結合ボタンを押すと実際にファイルが生成されます。
それぞれの被験者がどの試料に何点与えたかを閲覧するには、「個人のデータ」ボタンを押します。
100点換算得点、標準偏差基準化得点を出力するには「データ集計」を押します。なお標準偏差の計算上から、被験者が一人の場合、あるいは全員が同じ得点を与えた場合などは標準偏差や標準偏差基準化得点は出力されません。
イメージ得点とイメージ得点、イメージ得点と物理量の関係を調べるためには「相関マトリックス」「相関図」タブを選択します。物理量を設定するには「物理量」を押した後「設定」を押します。なお「相関図」でのイメージ得点としては標準偏差基準化得点を利用しますので、標準偏差基準化得点が計算できない場合は相関図は表示されません。
4. その他
プログラムと同じフォルダにpairwin2.iniというファイルを作っておくと、「ツール」メニューからアプリケーションが実行できます。下はその例です。
[Addins]
Number=3
[Addins1]
Caption=アンケート用紙印刷
Command=pfrmexec.xls
[Addins2]
Caption=電卓
Command=calc.exe
[Addins3]
Caption=エクスプローラ
Command=explorer.exe
5. 著作権など
このプログラムは筆者が京都大学大学院農学研究科 森林科学専攻、生物材料設計学研究室在籍時に、研究室で使われていたN88-Basic版のソフトをWindows95対応として作り直したものです。
ソースコードともに再配布、改変は自由ですが、このプログラムを用いたことで損害が生じたときの責は負いかねます。
こんなソフトの汎用性はかなり低いと思われますが、もし使ってみてよかったなんて奇特な方がおられましたら是非ご一報ください。
susumuk@fa.mbn.or.jp
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