追憶の路線 2002/ 2/ 3


 九州福岡、有明海を望む小さな漁港に、彼の路線の残照が今も存在する。
 積み出しの一時保管のために設けられた倉庫とそれに隣接するプラットホームの一部、今は単なる倉庫として使われているそこも、かつては大量の鮮魚を積み込む巨大な貨物駅であった。
 主漁場を移した今となっては、その姿を知る者も少ない。

 しかし、目を閉じ潮風に耳を傾ければ、きっとその光景が甦るに違いない。
 大蛇のように並んだ純白の冷蔵貨車に、忙しなく荷を運び込む人。 大消費地へ向け勇ましく出立した貨車を、眩しげに見送る人。

 時代という波に懸命に足掻きながら、しかし散っていった鉄路の残り香、そしてその記憶のすべてが過去へと消え去る前に、今一度振り返っていきたい。

当時の路線

路線図 昭和四十三年頃

★国鉄枝田線
 ●品渡場……●天梅……●塩坂江(さざけ)……●大榊……●妻ク……
●澤原(さわばる)……●筑後古川……●枝田……●室栄(むろえ)……●仁原(じんばる)……●北牟田……●筑後川口……●新牟田
赤字は浜鉄隣接部

★浜鉄市内線
 ○浜鉄澤原(はまてつさわばる)…○宇来儀(うきぎ)…○松乃原(まつのばる)…○神内(かんのうち)…○本杭(ほんぐい)…○古橋(ふるはし)…○笹瀬(さっせ)…○森(まふり)…○西市(にしいち)…●国鉄枝田

★浜鉄参道線
 ○西市…○浜鉄枝田(はまてつきだ)…○栗名主(くりなぬし)…○中参道(なかさんどう)…○稲美神社(いなよしじんじゃ)

★浜鉄臨港線
 ○笹瀬…○皆平(みなだいら)…○枝田浜港(きだはまこう)

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