「ふゃあぁっ!」 二階の自分の部屋にあがるなり、つばさは大の字に畳の上にひっくり返った。 祭半纏のままなのはいささか行儀が悪いが――だがしかし、祭半纏のままで寝転がるというこの上ない贅沢が許されるのは、一年のうちでもこの日をおいてほかにない。つばさは思いっきり、その贅沢を楽しむことにした。 電燈は消したままなので、部屋の中は夕闇そのままの色に染め上げられている。開け放した窓から吹きこむ涼風が、穏やかにつばさの頬を撫でた。 「あぁ」 どんぐりまなこを細めて、つばさは大きくひとつ息をつく。 お祭りの日を終えた後の感じというのはどこか、プールで一日じゅう泳ぎ回ったあとのそれに似ていた。手足の先までくたくたで、いまにも寝こけてしまいそうで――それでいて、しんなりと心地よくて。 畳を替えてまだ間もないので、こうして寝転がると井艸(いぐさ)の匂いが鼻腔の奥にしみわたる。 階下から聞こえてくるのは、宴会の席に集まった人々の声。駒形座のみんな。町会のおじさんやおばさんたち。笑い。ざわめき。乾杯の声。 ――お酒、飲みすぎちゃ、だめだよ―― 唇にしあわせな笑みを刻みつつ、つばさは心の中で呟く。 駒形座一座のメンバーは、総じて酒豪ぞろいだ。お酒より甘いものが好きな叔父さんがただ一人の例外だけれども、そのぶん叔母さんが二人分呑む。 お祭り後の打ち上げだからお酒を飲むのはいいのだけれど――今日はお祭りの中日。もう一日、明日があるのだ。 三社祭は、三日目が最終日。氏子であるそれぞれの町内のお神輿が次々と繰り出される二日目に続いて、三日目にはいよいよ三社さま――浅草神社の本神輿が街中を渡る。 こちらはつばさはさすがに担ぎ手ではないので、お祭りの空気を楽しみながらお手伝いに走り回るくらいだが……叔父さんたち大人のひとたちは、まだまだこれからが本番だ。 もっとも、たくさんの町会神輿が競い合うように街を行く今日の午後は、お祭りにいちばん熱のこもる山場といってもいい。町内のみんなのお酒がすすむのも、無理はないことなのだった。 んあぁ、といまいちど息を吐き、おもいきり両腕を広げる。いつのまにかはだけてしまった襟元に、夕暮れの風が心地良い。 こんな日の、こんなひととき。と、つばさは胸の中で呟いた。 こんな日の、こんなひとときを、まもる、ために。 「――――」 あの日からもう、十日ほどが過ぎていた。 この浅草に、東京に暗躍する奇術の徒たちの存在を知った、あの夕暮れから。自分と同じ『力』を有した仲間たちとともに、怪人と対峙したあの夜から。 茜桟敷の一員となった、あの日から。 正直なところをいえば、まだまだわからないことだらけだ。 茜桟敷を率いる茜音さんは、いったい何者なのか。怪人たちの企てる《東京大魔術計画》の全貌は、どういうものなのか。そして――自分の持つこの『力』は、何なのか。何ができるのか。 でも。 あたしが――したいことは、それだけは、いまはわかる。茜桟敷のメンバーとして、この『力』をもって、まもるべきもの、まもりたいものが何であるのかは。 遠く聞こえる、街のざわめき。階下から響く、にぎやかで穏やかな、みんなの声。 机の引き出しに、つばさは目を向ける。 茜音さんから貰った、旧い懐中時計。活動に必要な七つ道具が仕込まれた秘密の機械でもあり、茜桟敷の団章でもある金色の時計が、そこには収められて―― ――リリ……リィン―― 「わ」 唐突に響いた音色に、つばさは声をあげて跳ね起きた。 タイミングよくというかなんというか、この音はまさに。 「もしもし?」 引き出しから取りだした懐中時計の蓋を、つばさはぱかりと開く。茜桟敷団章、メインの使いかたのひとつはこの通信機だ。 数秒の沈黙ののち、時計の文字盤の向こうからは低い声が聞こえてきた。 『……駒形か?』 「仁矢くんっ!?」 つばさはもう片手でいそいそと、はだけた襟元を整えなおす。いや、別に普通に通信しているぶんには、向こうにこっちの姿は見えたりしないのだけれども。でも。 『寝てやがったのか?』 こちらのもぞもぞの気配が伝わってしまったらしい。いつもながらのぶっきらぼうな口調とともに、仁矢が嘆息する。 「な――何さ失礼なっ。いま起きたよ、ちゃんと!」 言ってしまってから、どうも墓穴を掘ったらしいことにつばさは気付く。 あ、寝てたっていったってぐうすか寝てたわけじゃなく――という弁解を口に出せるより先に、 『……まあいい。茜音のやつからの連絡だぜ』 ほんのすこしばかり呆れたような声が、通信機の向こうから返ってきた。 『明後日、月曜日。夕方の四時に茜桟敷に集合だそうだ……ぼんやりして忘れるんじゃねえぞ』 必要最小限の伝言。プラス、あまり必要ではない無愛想なひとこと。 いかにも彼らしい通信のあとで、それだけだ、と仁矢は短く言い捨てる。 「ちょ、ちょっとまってよ!」 『……何だよ』 呼びとめたつばさに、面倒くさげな仁矢の声が応えた。とはいえつばさも、何か考えあって通信をひきのばしたわけではなく。 「えっと、そのっ……集合って、なにかあったの? また奇術師のひとが来るの?」 『当たり前だろうが』 呆れたような、というより今度こそ本格的に呆れた声で仁矢は言った。 『あの馬鹿が暇潰しに呼んだだけだなんて言いだしやがったら、殴って帰るぜ、俺は』 「そっか、そうだよね―― あれ? ところで仁矢くん、いまどこにいるの?」 つばさが思わず訊ねたのは、通信機の向こう、仁矢の声に混じって遠く、ざわめきの声が聞こえてきたからだ。 「もしかして今日、お祭りに来てた?」 もしそうなのだったら、前もって教えてくれたらよかったのに。うちのお煎餅くらいだったら、これからお世話になる挨拶がわりにごちそうしたのに。 『おい……お前ん家の電話じゃねえんだぞ、この通信機は』 非常に不機嫌な声で、仁矢くんは呟いた。 「わかってるよ。いまもう切る。 なにさ。せっかくともだちになったのに、用事だけしか話しないんじゃなんか薄情な感じじゃんか」 つばさは唇をとがらせる。 ほとんど売り言葉に買い言葉で口にした反論だったが、通信機の向こうの仁矢はなぜだか妙な感じに口を噤んだ。 『……いちいち祭なんか見てられるかよ』 すこしの沈黙ののち、溜息と、肩を竦めるような気配が伝わってくる。 『人がごちゃごちゃ集まるところは、嫌いなんでな。 嫌いだけど、その苦手を克服して駒形さんのお神輿はちゃんと見たよ』 ――えええっ!? 前触れもない仁矢の変調に、つばさはまん丸に近い形で目を見開いた。なに? なんなの? いまの。 布団の上に取り落としかけた時計型通信機からそのとき、 ――てめぇ! 何しやがるんだ先輩! という仁矢の怒声と、あはははは、という軽やかな笑いの声が響いた。 ――先輩としてのサポートだよ。ほら仁矢くん、チームワークチームワーク。 「……若槻……センパイ?」 つばさはようやく、向こうの状況を察した。さっきの仁矢くんの声の後半、飄々(ひょうひょう)としたこの喋りは、茜桟敷の一員である若槻京一郎先輩のものだ。 『――やあ、駒形さん』 まだ続く仁矢の怒りの声をバックに、京一郎が通信に出た。つばさがこんにちは、と挨拶をするより早く、彼ははいつも以上の早いペースで言葉を続ける。 『悪いねえ、割り込むみたいな無粋をして。前もって連絡できなくって申し訳なかったけど、今日の駒形さんのところのお神輿、境内のおみくじ売り場の前辺りで見せてもらったよ。睦さんも、もちろん仁矢くんも一緒だったんだけど。まったく素直じゃないよねえ仁矢くん。さっきはあんなに食い入るように見 いい加減にしやがれこのやろうっ!!』 どうやら、そこで仁矢が自分の通信機を奪回したらしい。 ――おやおや仁矢くん、僕はまだ話の途中で という京一郎の声と、それに続いて、 ――もう、やめなよ京一郎くん。 苦笑の気配をはらむおっとりとした声が後ろから聞こえてきた。香春(かわら)先輩――香春 睦も、いっしょにそこにいるのだ。 『……ったく、ざけやがってっ……』 返ってきた仁矢の声は、少しばかり殺気だった荒い息とともに。 「だ、だいじょうぶ? 仁矢くん」 つばさの声がうわずったのは、仁矢の剣幕に圧されたからではない。思わず唇から洩れかけた笑いの声を、懸命にこらえたからだ。 『……ああ。んじゃ、今度こそ切るぜ』 むくれたような口調で言う仁矢に、つばさはうんっ、と頷いた。 みんなでお祭りに来ていたと、若槻センパイは話していたけれど。仁矢くんはいったいどんな顔で、あたしたちのお神輿を見ていたんだろう。うれしいような照れくさいような、微妙なこそばゆさが胸の奥で踊った。 『駒形』 閉じかけた通信機からいまいちど、仁矢の声が聞こえてくる。つばさはあわてて懐中時計を耳にあてた。 「え?」 『……祭りでくたびれてるとこ、悪かったな』 「あ――うん、ありがと! また茜桟敷でね!」 つばさの返事は、向こうに届いたかどうか。ぶづっ、という一瞬のノイズとともに、通信は途絶える。 懐中時計の蓋を閉じ、つばさは再びごろんと布団のうえに身を横たえた。 つばさはもちろん意識していなかった。学校の内外で問題児として恐れられる赤城仁矢に、率直な侘びの言葉をかけられるというのがどれほど稀有なことかというのを。 意識してはいなかったが……いまの一連のやりとりで、身体に残る疲労がすこしばかり癒されたような、そんな心地良さに、つばさはかすかに唇を綻ばせる。 色濃い夕焼けに染め上げられた六畳間。網戸の向こうから聞こえる街のざわめきと、階下の穏やかな喧騒。 三社祭、中日の黄昏。どこまでも平和な時間が、ここにあった。 ――数日の後につばさたちの身に降りかかる波乱など、もちろんのこと、いまはその前触れすらもなく。 「参ったなあ。まさか仁矢くんあんなに怒るなんて思わなかった」 飄々(ひょうひょう)と笑いながら、若槻 京一郎は自分の頭を掻いてみせた。かぶったお面が、頷くように揺れ動く。 先ほど境内の屋台で買った、セルロイド製の狐面。三社祭からの帰途の客で混みあう地下通路だが、白い狐のお面はそれなりに目立ちはする。 「うーん……」 睦は、やや困りぎみのはにかみとともに首をかしげた。 「すごく怒ってはいないと思うけど――でも。あやまったほうがいいんじゃないかな」 「そうかなぁ。 僕はこう、親切心から仁矢くんの背中を押すつもりで口ぞえをしただけなんだけど。ほら、お見合いに立ち会う親の気持ちみたいなものでさ」 「……お見合いのときって、『ここは若い者に任せて』っていうものじゃなかったっけ」 そう言ってしまってから、睦ははっとして指で唇をおさえる。いまの自分の台詞も、仁矢くんがもし聞いたらきっと怒るだろう。 幸い、といってはいけないのだけれど、仁矢くんは先程、ぷんすかむくれたまま家に帰ってしまっていた。 「そうか。そうだね。うん、僕もまだまだ研究が足りないな」 「へんに世話をやきすぎだよ、京一郎くん」 自分の中の照れもあり、ぎこちなく眼鏡を正しながら睦はたしなめる。 「いやいや。後輩の幸福を援護するのは、年長者としての義務だからねえ」 いつもながらの調子で京一郎は肩をすくめ……睦は、もう、と彼がかぶったお面を見上げた。とがらせたつもりの唇は、うまくいかずに苦笑のかたちになってしまう。 発された言葉からはすこしばかり紆余曲折しているけれど、京一郎が仁矢に――いや、茜桟敷メンバー全員に常に気を配っていることは、まがいもない真実だった。幸福を援護うんぬんというのも、飄々とした軽口にくるんだ本音なのだと、睦は知っている。 「睦さん?」 「え? あ」 かけられた声に、睦は思わず目をしばたかせた。 京一郎はひょいと、狐のお面をずらす。 伸びた前髪に隠れて、いつもの通り彼の瞳はうかがえない。ただ、唇はふんわりと柔らかな笑みを浮かべていて。 「どうしたのかな? 僕の顔になんかついてる?」 「……ううん」 こちらも自然と笑みを刻んで、睦は首を振る。 いつの間にか二人は、地下街の外れ――松屋デパートの地上口近くにたどりついていた。浅草の北側、言問橋方面に住処のある睦は、ここで京一郎とはお別れだ。 「じゃ、また茜桟敷でね、京一郎くん。今日はありがとう」 「いやいや、こちらこそ。 ――まったく、茜桟敷の会合もいつも今日みたいに、事件関係無しだといいんだけどねえ。ほおずき市のときには、駒形さんと茜音さんも誘っていこうよ」 じゃあ、明後日にまた――と、いたずらっぽい笑みとともに京一郎は手を振った。狐のお面を斜めに被ったまま、鼻歌を刻んで地下鉄の通路を歩いていく。 その後姿が雑踏に溶け消えるまで見送ってから、睦は地上への階段に足を向けた。 ちいさな定食屋さんやお店が並ぶ、古くからの地下商店街。普段はのんびりとけだるげな雰囲気に覆われたこの通路にも、お祭りのこの週末ばかりは数多の人が行き交う。 淡い蛍光灯の照明の下、低い天井にこだまするざわめきはどこか柔らかだ。 ざわめきの波を心地良く感じる――そんな自分にふと気づいて、睦はそっと口元を緩める。 ほんの数年前まで、香春睦はこうした人ごみの中を歩むのが苦手だった。 自らが有する《千里眼》の力のゆえに――いや、その頃はまだ《千里眼》などという名もついていなかったけれど――何かの拍子に、恐ろしいものが見えてしまう気がして。 たとえ見えなくても、人々が行き交う街の中には、そうした恐ろしいものたちがきっと潜んでいるにちがいなくて。無数の悪意の毒針が、空気の中に満ち満ちているように思えて。 そんな自分が変わったのは、この街に移り住んでから。 ふとしたきっかけで茜桟敷に加わり、京一郎くんや仁矢くん、茜音さんと知り合い、みんなとともに浅草の街の中を歩くようになってからのことだ。 茜桟敷の一員としてくぐり抜けてきた事件の中でも、恐ろしいものたちに出遭わなかったわけではもちろんない。街中に潜む悪意の針を、《千里眼》で、自らのこの目で、いくつもいくつも目撃してきた。 ただ、それでも。 地上への細い階段を、睦はゆっくりと登る。地下鉄の駅へ向かって降りてくる、人々の列とすれ違う。 祖父母と思しき老夫婦に手をひかれた、祭半纏のちいさな男の子。どこかでお酒を飲んできたのだろう、首に手ぬぐいをかけた赤ら顔のおじさん。綿飴の袋を手にして笑いあう、大学生くらいの恋人たち。 涼しい夕の空気とともに、穏やかな喧騒が通路を流れていく。 目に見えない空気の中に満ちるのがもしも悪意の針のみであったなら、この街が、今日のこのお祭りが、こんなにも笑いの声に満ちることはないだろう。 くぐり抜けた事件の中で。事件の合間の、平穏な日々の中で。自分はまた、確かに見てきたのだ。 数多の毒針を隠しているのと同じように――この街が、数多の柔らかな灯火(ともしび)を孕んでいることを。 地上に出ると、いつのまにか黄昏は過ぎ去り、空は夜の色に染まりつつある。 松屋デパート前の大きな交差点。横断歩道の向こうでは、電気ブランで有名な老舗居酒屋・神谷バーが、煉瓦装飾の外観を照明に浮かび上がらせていた。 三社祭の、狭間の宵。昼の間この街を満たした熱気の余韻は、いまだ消え去らず。柔らかな街明かりのひとつひとつに、柔らかなちからが宿っているようで。 数多の、灯火。目に見える灯火と、目には見えざる、けれども確かにこの街を埋めつくす、ともしび。 毒針と灯火のいずれが数多いのか、この世を覆うのはそのどちらなのか、自分には判らない。 ただ。 自分は、灯火を信じる側のひとでありたいと、睦は思う。 灯火を信じる側のひとで在りつづけることが――自分の、香春 睦の、たたかいなのだと。 信号が、青に変わった。 眼鏡をただし、そばかすの頬を微かに上気させて、睦は歩き出す。 彼女の次の戦いは、もうすぐ間近に迫りつつあった。 地下街の、通路の奥。 つい先程まで京一郎と睦が歩いていた飲食店の並びから、少しばかり離れた――関係者以外立入禁止の柵の、その向こう側。 天井の蛍光灯のみが照らす淡い闇に、地下街のざわめきが響きわたる。 ――と。 『ひゃはっ――』 不意に、甲高い声色が空気を震わせた。 突き立てられた楔のように、それは、異質な。祭の余韻を孕む穏やかなざわめきとは相容れない、嘲笑の声。 ひそめられた声は、柵の向こうの雑踏までは届かない。わだかまる薄闇に目を向けるものは、おりはしない。 『……なるほど。先程から拝見してりゃあ、微笑ましいもんですなあ』 誰に向けるでもなく、声はただひとりごちる。 『茜桟敷の面々はいっても、まだまだ純な子供というやつだ。 さっきの《幻燈師》様のお言葉じゃありませんが、心が洗われるようですよ』 奇妙だった。 呟きは浪々と、薄闇に紡がれているというのに――それを発する主の姿は、どこにもありはしないのだ。 行き止まりの通路に、隠れる場所も見受けられず。そこにあるのはただ、ひんやりとした壁と床のみ。 『だが――いけませんな。 どんな若木の苗だって、いつまでも真直ぐには育てない。誰かがどこかで、それを教えてやらにゃ』 姿なき声は、ひひひ、と歪んだ嗤いをあげる。 『あたくしの演目から、ひとつ学んでやってくださいやし。あんたがたは本来は部外者なんですが……特別に、ご招待いたしやすぜ』 はらり――一枚の紙が、蛍光灯の光の下に舞う。 何処から放たれたのかは判らない。まるで、天井から剥がれ落ちたかのごとく。葉書ほどのその紙片は落葉のごとく舞い揺れて、地下通路の床の上に貼りついた。 蜘蛛。 紙の上に藍色のインクで描かれているのは、六本の脚を広げて隙間から這い入らんとする、凶々しい蜘蛛の紋章だ。 その紋章の下に、刻まれた文字がある。 達筆な筆跡で記されたその短文は、次のように読むことができた。
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