野外炊事

 


野外炊事

ずばりその名の通り、飯を野外で炊くこと…… 
演習中に調理したりするのですが、演習場で炊事するため、ろくな設備も無く、結構しんどくて、不衛生です。

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1:準備……

 野外炊事は、各中隊ごとに編成される。
 準備するものは、飯缶、釜、バーナー、空気入れ、天日、包丁等……
 いわゆる、炊事に使う標準的なもの……

 それを、トラックに積み込み、後部に炊事車という炊事用の車輌を牽引して出発する。

 炊事車には、釜が六個あり、うち四個は、飯を炊くことができる。
 エンジンを使った野菜カッターもあり、簡単な煮炊きなどは、その車を使えばOKだ。

 

 出発前には、現品を受け取る。向こうで補給されるまでの、当面の食材だ。
 これもトラックに積み込み、出発を待つ。

 やがて、出発。
 半日以上かけ、演習場へ到着。すぐに飯の準備に取りかかる。
 荷を降ろし、熱湯で殺菌。

 その後、切り込み、ボイル、米研ぎ…… などなど
 初日は、まだ演習場の施設が使えるから、ましだが……

 翌日からは状況に入るので、山の中で飯を作らないといけない。
 これがなかなか……キツいのだ。

 

2:星空の元各作業

 いよいよ演習場へ移動。各器具ををしっかり固定し、トラックへ。

 程なく、演習場へ着き、再び展開。
 雨が降っているせいで、下は異様にぬかるんでいる。
 20リットル入りの水缶が、ずぼっとハマってしまうし、半長靴も泥だらけ。

 しかし、また移動するという。

 とりあえず、携行食(ボイルのみの缶詰・パック飯)をボイルし、渡す。
 それが終わると、あらかじめ野菜を切り込み、向こうでの作業を減らしておく。

 移動のため、下ろしたモノを再びトラック&炊事車にくくりつける。
 この作業、結構重労働……

 夕方になって、ようやく移動。
 この途中、折角切り込んでおいた野菜をおこっとしてしまう。

 目的地に着いたのは、もう日付が変わろうとする時刻。
 とりあえず、荷物だけ下ろす。とりあえず、明日の朝の携行食をボイルする。
 それ以外は明日の作業だ。

 くさむらにシートを敷き、それにくるまるようにして、寝た。
 めちゃくちゃ寒かった……(汗) 

 

3:戦闘??

 起床後、携行食を区分けし、引き渡し。

 

 さて、調理等で汚れた釜などを洗うのだが、水といえば、水トレーラーにあるだけしかない。

 これも、各中隊の炊事と共同で使っているし、調理にも使わなければならないので、無駄遣いは出来ない。
 なので、洗い方も、少ない水で要所だけ、という感じになる。
 しかも、山の中なので、木の葉は落ちてくる、虫は飛び込んでくる。というありさまで、衛生的とはとても言い難い。l

 しかも、演習中……つまり、敵の襲撃もあるらしい……というわけで

『状況ガス!』
 突如、補助官の声が響き渡った。

 すぐに防護マスクを装面し、銃を構えて展開する。
 もちろん、調理中だったから、バーナーに火がついたまま……(汗)

 何考えてるんだ、という…補助官に対する怒りが皆の間に広がっているが、……これはしょうがない。
 だって、『敵は補助官』という言葉があるくらいだから(汗)

『状況ガスなし』になったあと、戻ってみると案の定、おかずは焦げていた。

 本当に毒ガスが撒かれたのなら、調理中のブツは全部破棄しなければならないのだが、今回は勿論そんなことはしない。
 もっとも、こんな奥地まで敵に襲撃されるようでは、もう負け戦だけど(苦笑)

 

4:もうひとつの敵は…

 演習中、悩まされていたのは、虫の襲撃。

 ぶよと藪蚊の波状攻撃は、超強力に効く。

 ぬかるみでの作業で、すっかりボロボロになった半長靴を洗って乾かす為、一度靴下の脱いでちょっと休憩していたところに、ヤツらは襲いかかってきた。

 小一時間、手や足が、ドラえもんの手になってしまい、もうかゆいやら痛いやら……
 かなり悲惨な状態になった。

 あと、ちょっと戸惑ったのはトイレ。
 当然山の中なので、円ピ(シャベル)で、穴を掘ってそのなかに……
 で、用を足し終わったところへ、土をかぶせる。

 まあそれは良いのだけど……ここでも虫の襲撃が……
 哀しいかな、避けることが出来ず……新たなかゆみに耐えないといけない……

 ここまでで悟ったこと……
 自然は美しくも優しくもないです。それは遠くから見てのこと。
 間近に迫る自然の姿は、かくも厳しく、人間に敵対心を剥き出しにしているところです。
 それを踏まえても、まだ好きだと言えるのならば、本当に自然を愛している、と言えるのでしょうね。

 

 閑話休題……

 演習も無事終了……後は荷物を纏めてトラックに積み込み。
 演習部隊は後片付けを済ませれば、もうあとは何もない状況ですが、こちらはそうも行きません。

 そう、廠舎で喫食する、最後の夕飯を作らないといけないんですね(汗)
 というわけで、片付けは一番最後になってしまいます。

 しかも……結構皆からは冷ややかに見られるのが……辛いところですね。

 


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