台風19号

 


台風19号

この年のこの台風は、皆さんの印象にも残っていると思う。
日本列島を縦断し、全国に甚大な被害をもたらした台風だ。

ちょうどそれが、九州に上陸している頃……私達はなにをやっていたかというと……
その直下で演習をしていた……

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1:到着〜状況

 演習の舞台となる、熊本県の演習場へ到着。
 既に、天気予報で台風の上陸は確実だったので、ちょっと不安だった。 が、中止になるわけもない。
 とりあえず、宿営地の設営をする。
 その後、編成を整え、一泊……
 状況開始は、翌日となる……

 翌日の深夜に状況開始となり、移動する。

 夜が明けると、ドンヨリと曇った空に、不気味さを憶える。
 妙に生暖かくて、腹具合もおかしくなった憶えが……

 まあ、この時点では、小雨がぱらつく程度だった。

 

2:雨天下の状況

 いよいよ暴風が激しくなった。
 攻撃で、空砲射撃をするのだが、雨にうたれた銃には、早速サビが浮かんできていて、一発撃つ度に止まる(次弾の装填が出来ない)有様。
 もっと油を差しておけば良かったと後悔するも、あとの祭り……

 攻撃、移動を繰り返し、いつしか日も暮れる。

 普段なら、外で仮眠なのだが、雨風があまりにひどいため、トラックの中で仮眠。
 もっとも、全身ずぶぬれで、ストーブに当たるも、下着やらがまとわりついて気持ち悪い。
 残念ながら、食欲も無い。

 翌朝。
 もう記憶に残らないが……まあまあ良い天気だったと思う。

 状況も終了し、宿営地へ帰る。
 ……あらかじめ台風に備えて、天幕は倒してあったのだが、……荷物は見事、雨風に晒されたようで……なかなか悲惨な状態だ(汗)
 用意していたスリッパなども、どこかへ流されてしまっている。

 まあ、それくらいで済んだのはまだ良い方で……別の天幕などは、ロープがブチ切れて、荷物共々吹っ飛んでいたろころもあった。

 その後始末も、なかなか骨が折れるものだった。

 

3:先発帰隊

 私は、帰ってすぐに糧食の交代が待っていたので、先発の撤収組に入っていた。

 輸送隊のロングトラックに乗せられて、一路駐屯地へ。

 その途中、外の景色を眺めていたが、やはり台風の爪痕はかなり凄まじく、暴風の激しさを感じた。
 傾いた電柱。半壊状態の民家。折れた街路樹。
 そんな光景を見せられると、地元が心配になる。

 その不安は、やはり的中していた。

 営庭に植えられた樹木は、見事なまでに傾いていて、また、隊舎前にあった最も大きな樹木に至っては、完全に倒れてしまっていた。

 ……なんというか、見ていて寂しい気分になったのを憶えている。

 私はその後、銃の手入れだけしてすぐ、糧食の交代に入ったのだが、他の舞台は、災害派遣に駆り出された。

 防府市のあたりでは、大規模な停電が起こっていて、土砂崩れによる生き埋め事故も起きているという。
 その方に行くのだそうだ。

 結局、復旧までかなりかかったようだから、相当な被害だったことが窺える。

 


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