戻る
「華森蘭丸くん[2]」〜ver.「K」〜
原案:みかん飴さん
作K



 真っ青な空と白い雲、きもちいい初夏の土曜日の午後。学校帰りの下校道、風があたしの伸ばし始めた髪を心地よく揺らしてくれている。
「ねえ、華森さん。聞いてた?」
とあたしはチカちゃんに言われた。あたしは今、クラスメイトのチカちゃんと一緒なの。
「えっ、ううん。チカちゃんゴメーン。あたしチョット考え事してた。何の話だっけ?」
「もー、やっぱり聞いてなかった!」
 チカちゃんはホッペをふくらましてわたしを見るので、わたしは言い訳した。いい訳と言っても本当の事だもん。
「だから謝ったじゃない。あたし、青い空と白い雲が大好きなんだ。だから見とれてたの。」
「はいはい、華森さんは青い空と白い雲が大好きなのね。そんな事よりも彼氏つくらない?」
「へ!?。急にそんな事言われても・・・」
 あたしはチカちゃんの言葉に驚いてしまった。
「あたしの彼が友達に女の子紹介してくれって頼まれたんだって。華森さん、彼氏いないって言ってたよね」
「そりぁー、彼氏いないけどー」
「女の子紹介してあげないと、あたしの彼氏に悪いし。だいたい、華森さんぐらいかわいい娘に彼氏がいない方がめずらしいんだよー」
「えー。(やっぱり、あたしってかわいいかなー。自分でもチョットそうも思ってたけど。でも、彼氏なんて・・・)」
 なんて、声に出せない事をあたしが考えているうちにチカちゃんは、あたしからすこし離れた所にいっていた。
「じゃあ、華森さん。月曜日に返事聞かせてね。じゃあねー」
と言うとチカちゃんは行ってしまった。
「彼氏か・・・。あたしも、もう高校2年だもんね。彼氏の一人もいてもおかしくないか・・・
チカちゃんも言ってくれたけど・・・、あたしってやっぱりわかいいよね。
髪の毛もすこし伸ばして、いい感じになってきたし。スタイルだって悪くないし。この制服もかわいいよねー、だってわたしこの制服着たくってこの女子高選んだぐらいだし・・・」
 あたしの名前は華森かすみ。高校2年生。でも、3年前までは・・・
 その時、
「蘭丸っ・・・」
とあたしは自分の名前を呼ばれ肩をたたかれた。


「蘭丸お兄ちゃん。なーに、女の子に浸りきってるのよ!」
 そう言って女子高生の肩をたたく大学生風の男。
「あっ、かっ、かすみ。いつからそこにいたんだ?」
と、その男に言う女子高生。
「さっきからだよ。それよりお兄ちゃんはすっかりあたしの体になじんでるよねー」
「そう言うかすみはわた・・じゃなくて俺の体で彼女までつくって」

 そう、蘭丸君(兄)とかすみちゃん(妹)は体が入れ替わっているのでした。

「お兄ちゃん。彼氏作るんだー」
と蘭丸君は言われると、
「ヴっ・・・、そっそれは」
 答えに詰まる女子高生の蘭丸君。
「家じゃあ今でも女の子になりきれないとか言っておきながら・・・。しかも、今の学校も近い学校だと正体がばれそうだから、とか言っておきながら制服で選んだんだ?」
「かっ、彼氏は友達の頼みだからしょうがなく。学校は・・・、って何でかすみがそんな事知ってるんだ!」
「・・・お兄ちゃん。さっき一人になってからの独り言。全部声出していってたよ」
と、あきれ顔で今年大学2年になる蘭丸君のかすみちゃんが言った。
「しかも『あたしやっぱりかわいいよね』だって、キャー」
 そうかすみちゃんに言われ、顔を真っ赤にする蘭丸君。さっきは自己陶酔していて、そう思ったけれど他人に冷静にそう言われると恥かしくてたまらなくなってくる。
「そう言えばお兄ちゃん。この前、お母さんと下着買いに行ってきたんだって?」
「ヴ、そんな事まで知ってやがるのか、かすみの奴」と蘭丸君は思ったがポロリと本当のことを言った。
「だって、かすみの持ってたブラじゃあ、もう全部小さくて苦しいんだもん。俺も女の子になって3年も経てば・・・」
「なっ」
 今度は蘭丸君のかすみちゃんの言葉が詰まった。
 ここで兄妹の形勢は逆転していた。
「かすみ。おまえなぁ、大学生の男が女言葉使ってたら気持ち悪いだろ」
 攻勢に出る蘭丸君。
「そっ、外ではちゃんと男口調で話してるもん」
という風に言い返すかすみちゃん。
「それに比べたら・・・」
と蘭丸君は言い、
「それに比べたら?」
とかすみちゃんと問い返すと・・・。
「あたしがかわいい女子高生でいる事は、見た目は自然だもん」
と蘭丸君は言ったのだった。
 結局は、女子高生のかわいい自分をおおいに気に入っている蘭丸君でした。


k1999@mail.goo.ne.jp
戻る