「絵日記」

作 真城 悠


4がつ2にち

 きょう、あたらしい日記ちょうを買ってもらいました。

 これから毎日つけたいです。

 

4がつ5にち

 きょう、おにいちゃんにいじめられました。

 しらないおにいちゃんに「おかねをもってこい」といわれました。

 こまりました。

 

4がつ7にち

 やっぱりおかねをもってこいといわれました。たたかれました。かえったらおかねがいっぱいあればいいのになあ。

 

4がつ8にち

 きょうは、すっごくうれしいことがありました。

 おうちにかえったら、テーブルの上におかねがおいてありました。

 たぶん、おかあさんがおいてくれたんだとおもいます。

 しらないおにいちゃんにあげたら「きょうはかんべんしてやる」といってたたかれませんでした。

 よかったです。

 

4がつ10にち

 きのう、べつの日記ちょうに「おかねがほしい」とかいたけど、テーブルの上にはありませんでした。この日記ちょうじゃないとだめみたいです。

 だから書きます。

 こんどしらないおにいちゃんにおかねをだせといわれたら、そらからふってきますように。

 

4がつ11にち

 きのう、かいたとおりになりました。とってもふしぎな日記ちょうです。じゃあ、あしたはかえったらケーキがたべたいです。

 

4がつ12にち

 けーきはとってもおいしかったです。

 

4がつ13にち

 きょう、となりのよっちゃんのおうちにあそびにいきました。よっちゃんのおねえちゃんはとってもきれいでやさしいです。

 でも、きょうもおにいちゃんにいじめられました。

 あんならんぼうなおにいちゃんじゃなくておねえちゃんがほしいなあ。

 

4がつ14にち

 きょう、おにいちゃんがおねえちゃんになりました。

 

4がつ15にち

 きのう、おにいちゃんがにっきに書いたとおり、おねえちゃんになったので、おんなのこなんだからすかーとはくべきだとおもいます。

 パパとママはびっくりしてました。

 おにいちゃんはがっこうをやすんで、おいしゃさんにつれていかれました。

 

4がつ16にち

 おねえちゃんになったおにいちゃんは、まっかなすかーとをはいて、おんなのこみたいにかみをむすんでました。とってもかわいかったです。でも、やっぱりいじわるで、あたまをたたかれました。きょうもがっこうをやすんでます。

 それで、いちにちじゅううちにいるので、しょちゅういじめられます。もっと「おしとやか」になればいいのに…。

 

4がつ17にち

 おねえちゃんになったおにいちゃんは、きょうはとってもやさしかったです。しぐさもことばつかいもおんなのこみたいになってました。パパもママもびっくりしてました。でも、かあいそうだから、はやくがっこうにいけるといいとおもいます。

 

4がつ18にち

 あさおきたら、おねえちゃんがせえらあふくでおみそしるをつくってました。

 とってもおいしかったです。

 パパもママも、なんだかいつもとおなじでした。おねえちゃん、がっこうにいけてよかったね。

 

4がつ19にち

 またしらないおにいちゃんにいじめられました。どうしてあんなにらんぼうなんだろう。あのひとも、うちのおにいちゃんみたいにおとなしくてかわいいおんなのこになっちゃえばいいのに。

 

4がつ20にち

 きょうはしらないおにいちゃんにはあいませんでした。がっこうをやすんでいるそうです。うわさではびょうきだそうです。びょうきはかわいそうなのでいままでとかわらずがっこうにこれればいいとおもいます。

 

4がつ21にち

 きょう、みちをあるいていると、しらないきれいなおねえさんに「いままでごめんなさいね」といわれました。なんのことかな?

 

4がつ22にち

 きょう、にゅーすをみていたら、またどこかでせんそうがおこったそうです。ママがてれびをみながら「みんなどうしてらんぼうなのかしら」みたいなことをいってました。

 よのなかみーんなかわいくておとなしいおんなのこになっちゃえばせんそうもなくなるとおもいました。

おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 どうも、最近自分のページも好調の真城です(自分で言うかね、普通)。

 ネットサーフィンの途中、ぶらりと立ち寄った「ギャラリー」を見て仰天!なんと、ストーリーをつけるのが困難と言われていた(いえ、悪い意味じゃないですよ(笑))「絵日記」にストーリーが!中を読んでまたびっくり「華代ちゃん」!?

 びっくりすると同時にほっと胸をなでおろしました。先をこされなかった…と。

 私の貧相な想像力では、「絵日記」というあのイラストから連想する小説と言えばこういうのしかありませんでした。

 「萌え」るにはかなりの想像力を必用とするのですが、それでもかなり「萌え」られる要素はあると…少なくとも自分では思ってたりしますが。

 ラストのブラックなオチも個人的には好きな短編だったりします。