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ピンクハウスは魔法のお洋服
作:もと(MOTO)



「知美ちゃんかわいかったわね。」
「まあ、そうだけど、あのおてんばがあんな風になっちゃうなんてな。だってあいつ、僕とけんかして、けっ飛ばしたことあるんだぜ。」
「あいつなんていっちゃだめでしょ、尚樹。知美ちゃん中1だから尚くんより2つ年上でしょ。それに、知美ちゃんだって女の子だもの。そのくら い当然だわ。」
「だって、あんなスカートはいちゃってさ。あのレースとかついたやつ着ただけでさ。」
「あの服BABY PINK HOUSEっていうのよ。ほら、お姉ちゃんも着てるじゃない、いつも。」
「あれ?小夜子姉が着てるのってPINK HOUSEじゃないの。」
「あの子供服のよ。かわあいいでしょ。」
「そりゃかわいいけどさ。なんか知美姉ちゃんが着てるのってイメージが違うんだよな。あんなおてんばでさ、男顔負けで喧嘩もしてたようなのが、 雰囲気全然変わってたもんな。」
「そりゃ、PINKHOUSEって魔法のお洋服だもの。これを着たらだれだってかわいい女の子になれるんだよ。」
「ばっかばかしい。魔法じゃあるまいし。」
「あら、魔法よ。お店でもそういってるのよ。(笑)」
「へっっんだ。そんなことあるわけないじゃん。」
「そうかな?」
「あ、姉貴、どこ行くのさ?」
「あら、寄り道ぐらいいいじゃない。」

「あれ、ここって。姉貴の好きな洋服の店じゃん。」
「そう、PINK HOUSEのお店よ。BABY PINK HOUSEも扱ってるのよ。」
「へ〜、また買い物するの。」
「そうよ。ここのお店よく知ってるから、ちゃんとご挨拶なさいね。」
「へいへい。」
「あ、香里さん。こんにちは。」
「ら、いらっしゃい。今日は弟さんもいっしょなの。」
「そうよ。尚樹、あいさつなさい。」
「こんにちは。」
「はい、こんにちは、尚樹くん。
きょうはどんなの見ていく?」
「そうね、ちょっと相談があるの。」
「どうしたの。…………ふ〜ん、尚くんを…なるほど………。」
「それでね、…………。」
「OK、OK。じゃあ…………」
「なんお話ししてるの?」
「うんうんべつにね。それより尚くん。いくつなの。」
「10歳です。」
「じゃあ身長は130cmくらい?」
「う、うん。でもどうして。」
「なんでもないの、ただ、尚樹くんってかわいいなって思って。それより、尚くん、さっき姉ちゃんとお洋服の話したでしょ。」
「うん。だって姉貴っておかしなことばっかりいうんだぜ。魔法の洋服なんてあるわけないじゃん。」
「そんなことないのよ。PINK HOUSEって魔法のお洋服なの。これを着るとだれでも、かわいい女の子になるのよ。」
「ほら、ごらんなさい。ちゃんとお店でも言ってるでしょ。それに、知美ちゃんだってかわいくなったじゃない。」
「あれは、BABY PINK HOUSEだろ。」
「あらいっしょよ。だって、このお店じゃどっちも扱ってるもの。BABY PINK HOUSEだったらかわいい小学生の女の子になれるの よ。」
「あのね〜、そんな問題じゃないだろ。そんなこと嘘に決まってるじゃない。」
「あら、尚くん、そんなことないわよ。うちはそんなお店じゃないもの。そんなこと言ってると、いいものあげようと思ったけどやめようかな。」
「え?いいものってなになに?」
「それはあとでのお楽しみ。
あ、小夜子さんここに準備しておいたから。似合いそうなばっかりよ。」
「あ、サンキュ。」
「え、いいものってそれ?」
「それもだけど、よかったらあの花束(コサージュ)買ってあげようか?」
「いらないよ。あれ女がつけるものだろ。」
「そうね。じゃあ、後のお楽しみね。それじゃまたね。」
「じゃあ、尚くん。また小夜子お姉さんと一緒にお店にきてね。」
「う、うん。さようなら。」
「バイバイ。またね。」

「姉貴が悪いんだぜ。僕の服ジュースで汚しちゃうなんて。」
「仕方ないじゃない。急に揺れたんだから。」
「とにかく、この服脱ぐよ。」
「じゃあ、お風呂に入っちゃって。そして、もう寝ちゃいなさい。きのうファミコンで疲れてるんでしょ。」
「ふわーいい。」


「お、お姉ちゃん!!!どうして、こんなところであたしが寝てるの!!」
「どうしたの尚子ちゃん。あの後すぐ寝ちゃったし、起こすのもかわいそうだったから、それに着替えなきゃいけないでしょ。」
「でも、これって?これって!?」
「かわいいでしょ。ブラウスは白でこんなところにまでフリルがあしらってあるし。ワンピースはピンクにしたのよ。こっちもレースがきれいで、 花束とさくらんぼがあしらってあるの。それにりぼんかわいらしいし。
「だって、これ女の子の洋服でしょ。」
「あら、いいのよ。」
「ど、どうして?」
「だって、もう尚子ちゃんは女の子だもん。」
「え?そんな?どうしてあたしが女の子なのよ。」
「だって、言ったでしょ。PINK HOUSEは魔法のお洋服だって。これで、尚ちゃんはもうかわいい女の子になったのよ。ほら、鏡をみてご 覧なさい。
「え。」
「お花の模様のかわいいスカート。レースがたくさんあしらってあるブラウス。そして、かわいい手と足。それにお顔もみてごらん。目もぱっちり ししてるし、きれいなお鼻。ほっぺたもふにふにしてるし、髪の毛もきれいでしょ。食べちゃいたいくらいかわいい女の子よ。」
「でも、あたし…。」
「ほら、言葉使いももう女の子してるじゃない。」
「え、え?でも、あたし、じゃない、ボク、こんなの意識してるわけじゃないもの。」
「そうよ。意識しないで”あたし”なんて言うのは女の子だけでしょ。」
「でもでも、あた、ボクって本当は男の子じゃないの?」
「そうかしら、じゃあ試して見ようか。それじゃ。外へ行きましょ。」
「え〜〜。いやだぁぁ。」
「なにいってるの。そとにでないとわからないじゃない。男の子だったらそんなに消極的じゃないから、やっぱり、女の子なのかな。」
「わ、わかったわよ。…じゃなくてわかったよ。」

「ねえ、公園なんかにきてどうするの。」
「そうね、あ、あの木でできたアスレチックスの上まで登ってみてよ。」
「あれって、かなり高いよね。」
「いつも、のぼってたじゃん。男の子だったら、登れるよね。」
「う、うん。」

「ああ、やっとあがれたのね。ずいぶん時間かかったじゃない。」
「そ、そうかな。」
「そうよ。まあ、ふつうの男の子よりは時間かかったかな。じゃあ、こんどは、そこから飛び降りてご覧なさい。」
「え〜どうして??」
「どうしても。
 …………あらあら、どうしたのかな?降りれないのかしら?」
「………だ、だって…。」
「じゃあ、横の、木の階段で降りてきなさい。」

「ねえ、どうしてこんなことさせたの。」
「覚えてない?この前クラスメイトの女の子とここで遊んだときに、その子に、”僕ここから飛び降りるけど女の子だったら怖がって飛び降りれな いだろ”って言ったじゃない。」
「そ、そうだっけ?」
「さぁってと、今日、尚ちゃん飛びおれたの。」
「そ、それは、………きゃっ!!」
 うぅ〜〜〜わんわん、バフバフ!!
「こら、ベス!ああ、ごめんごめん、悪かったね。お嬢ちゃんを泣かせてしまったかな。さあ、ベスこっちへ来るんだ。」
「ふぅ〜驚いた。
あらあら、尚ちゃん泣いちゃったのね。大丈夫よ、もう犬いないから。」
「ぐすんぐすん、な、泣いてなんかないもの、ぐすん。」
「いいのよ。怖かったのね。女の子なんだから泣いてもいいのよ。前は犬と喧嘩しても大丈夫だったけど、もう女の子なんだもんね。あら、まだふ るえてるの。」
「ふ、ふるえてなんかないもん。」
「あら、でも、どうして、ふるえてるのかしら。」
「そ、それは………」
「ん?」
「……お手洗いに行きたいの。」
「そう、じゃあ近くのダイエーにはいろうか。」

「さあ、行ってらっしゃい。あれ、どうしたの?」
「ね、ねえあたしどっちのトイレには行った方がいいの?」
「どっちでも、男の子だったら男子用、女の子だったら女子用よね。」
「う、うん。」
「あら、男子用のトイレの前でどうしてもじもじしてるの。」
「な、なんか恥ずかしいの。」
「あらあら、もし男の子だったら男子トイレ恥ずかしいはずないのに。でも、どうしても恥ずかしいんだったら、女子トイレにする?」
「う、うん。でも、今日はBABY PINK HOUSEだから。」
「そうね、PINK HOUSEは女の子になれる服だからね。」

「あ、お姉ちゃんどうして一緒に個室に入ってきたの。」
「大丈夫でしょ、この個室広いから。」
「そ、そうじゃなくて、あたし、おしっこしたいのに。人に見られたら恥ずかしい。」
「あらあら、男の子は個室でおしっこしないから、みんなに見られても恥ずかしくないのにな。でも、女の子だったらしょうがないかな。」
「でも、あたし、本当は男の子…。」
「え?あれ?ほんと?うそでしょ、さっきの公園からの様子見ても。本当にそうだっていえるの?」
「え、う、うん。男の子だと思うよ。」
「”思う”?そんないい加減じゃね。まあちょうど、いいわ。じゃあ、おしっこしてごらんなさい。ただし立ったままでね。」
「ええ??そ、そんなのいやだぁ。恥ずかしいよぉ。」
「どうして、どうして、はずかしいの。じゃあ尚ちゃん、どうしてしゃがんでするの。男の子は立ったままするんじゃなかったの?」
「(はっ)え、………。でもでも。」
「でも、じゃないでしょ。はいめくり上げるわよ。」
「きゃ、やだ。」
「どうしたの、そんなにそんな声上げて。あらあら顔真っ赤。じゃあ、好きになさい。あらあら、ほっとした顔して。しゃがんでおしっこしたいの ね。」
「う、うん。」
「どうして。」
「………」
「くすっ。いいわ。じゃあしゃがんでおしっこしなさい。あら、お洋服を汚しちゃダメよ。
………
はい、ちゃんと紙で後始末したわね。それにしても、どうしてしゃがんだのかしら、どっちでもよかったのに。」
「なんでかわかんないけど、立っておしっこできなかったの。」
「そう、でもいいのよ。だって、女の子はそれでいいの。」
「………。」
「あら、まだ正直になれない?じゃあいっしょにいらっしゃい」

「あ、ここって下着売場じゃない。」
「そうよ。ほらこれなんて似合うじゃない。」
「きゃ、いや、そんなの。」
「あらこれ今はいてるじゃない。ほら男の子用のパンツって前があいてるのよ。見てごらん。」
「そ、そんなの見せないで。」
「あら、でもこれ今、尚ちゃんがはいてるのじゃない」
「え、あ……。」
「そうよ。下着は換えてあげなかったもんね。あら、どうしたの急にもじもじし出して。」
「え、……だ、だって。」
「恥ずかしいんだ。男の子のパンツはいてるの。」
「そ、そんなこと大きな声で言わないで。」
「ふ〜ん、じゃあ正直にいいなさい。どんなパンツがはきたいの。」
「お、女の子の…パンツがはきたいの。」
「そう、じゃあいらっしゃい。
さあ、どれにする?」
「あ、このレースかわいい。それにお花の模様もついてる。あ、これ前にリボンがついてるんだ。」
「じゃあ、お金を上げるからレジに行って来なさい。」
「うん。」

「うれしそうだったわね。」
「え、なにが?」
「レジで並んでる時よ。」
「そ、そうかな?」
「そうよ、やっとかわいいパンツがはけるんだって顔してたよ。」
「………」
「正直におっしゃい。いま、女の子になって、パンツも女の子のになったのよ。もう男の子のパンツはかなくてもいいのよ。うれしいでしょ。」
「……でも…。」
「でも、どうしたの?」
「あたし、本当は男の子なんでしょ。だってきのうまでは男の子だったんだもの。」
「そう、きのうまでは尚樹くんはたしかに男の子だったわ。でも、きょう尚ちゃんがしている行動って、女の子そのものよ。それに、尚ちゃんも女 の子している方が安心してられるんでしょ。」
「…う、うん。」
「それはね、尚ちゃんがPINK HOUSEを着たからよ。この服には魔法がかかってるっていったでしょ。PINK HOUSEを着たときか ら、もうかわいい女の子になってしまうのよ。」
「でも、魔法なんて本当にあるの。」
「あるのよ。尚ちゃんが信じているあいだずっと効くのよ。尚ちゃんこのまま女の子になちゃっうのよ。」
「ほんとに?」
「そうよ。尚ちゃん信じる?」
「うん。信じます。」
「じゃあ、ちゃんと言ってごらんなさい。自分のこと尚子って。そして、尚ちゃんは男の子か女の子かもね」 「う、うん。…尚子は、尚は女の子です。」
「ホント?」 「うん。信じます。」
「そう、じゃあ、きのうのお店に行って香里さんにも報告しなくっちゃね。」

「あら、小夜子さん、こんにちは。今日は妹さんつれてきたの。」
「そうよ、今日からこの子は妹なの。尚子、あいさつなさい。」
「こんにちは。」
「はい、こんにちは尚子ちゃん。よかったわね、かわいい女の子になれて。
あら、どうしたの?もじもじしちゃって。きのうはあんなに元気いっぱいだったのに、内気になっちゃって。やっぱり女の子になったからなのか な?どう、ちゃんと魔法はあったでしょ?」
「う、うん。」
「でも、うれしいでしょ。顔に書いてあるわよ。」
「そうなのよ。でも、香里さんのお見立ててやっぱりすごいわ。」
「でも、小夜子さんもよかったじゃない。小夜子さんって妹が欲しかったんでしょ。」
「うん。尚子が妹になってくれてうれしいんだ。もう、ずっと私の妹だからね。」
「じゃあ、お姉ちゃま。尚は、もうずっと女の子でいられるの。」
「そうよ、だってPINK HOUSEにはかわいい女の子になれる魔法がかかっているんだもの。」
「魔法は本当にあったんだ…。」
「そうよ、あの時、嘘だ〜、っていった子いたけどね。」
「ご、ごめんんさい。」
「くすっ、いいわ、許してあげる。そのかわり正直にいいなさいね。女の子になれてうれしい?」
「はい、うれしいです。」
「そう、正直に言ったご褒美に、尚子ちゃんに昨日言った、あのコサージュプレゼントしてあげる。」
「わ〜い。似合うかなぁ。」
「そうだ、いちど、そのコサージュとか持って写真とってあげようか。お客さんでかわいい女の子をBABY PINK HOUSEのポスターのモ デルにできないかって相談受けたことあるの。だから一度撮って見せて上げたいの。」
「そうね、こんなかわいい女の子になれました、ってことPRできるもんね。」


 1ヶ月がたち、お店には新しいポスターが貼られていました。新しくできあがったBABY PINK HOUSEのポスターには、尚子ちゃんが 写っていました。
 そして、そこには、”I ENJOU GIRL's LIFE”のコピーが添えられていたのでした。

                   <FIN>


 どうも、作者のもと(MOTO)です。このお話は正確に言うと、ことぶきひかるさんのCGを見てつくったものではありません。むかし、NIFのとあるPATIO(ま あ、BBSと思って下さい)で、そこの常連さんをキャラクターにして書いたものです。PHということで、ふるい倉庫から引っぱり出してきたというわけです。ちなみ に、むかし発表したときは、主人公名が基樹で”もと”や”もとちゃん”と呼ばれていたという代物でしたので、これは変えさせていただきました。(笑)
 これにちかいネタは何回か書いたことがあるのですが、まあ、書くかどうかは未定です。書いているとどうしても似通ってしまうんですよね。
 それでは、ご感想を待ってます。



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