第八話 『夕闇の帳(とばり)


 何が起こったのか、シャザムには一瞬理解できなかった。
 ――なんだ――これは。
 まるでそこから生えているかのように、鳩尾(みぞおち)のすぐ脇に突き立った一本の矢。
床に膝をついたまま、シャザムはそれを引き抜こうと手をかけた。
 できない。片手ではびくともしないほど、それはがっちりと食い込んでいる。
「――――」
 シャザムはようやく悟った――矢がその寸の半ば以上まで、己の身体の中に没していることを。
 正面から、足音がゆっくりと近づいてくる。
 呼吸ができない。無理に息を吸い込んでも、胸のあたりでひゅるひゅると乾いた音が鳴るばかりだ。
 声をあげようとした。それも叶わなかった。代わりに、錆にも似た匂い――あの岩場の殺戮の時に嗅いだ匂いが、喉の奥のほうで弾けた。
「――っ――ぁあっ!」
 こみあげてくる嘔吐(おうと)。喉を通りぬけて石床に撒かれたのは、吐瀉物(としゃぶつ)ではなく真紅に染まった血の塊だった。
 何だ。
 どうしてしまったというんだ、俺は――
 足音が、すぐ目の前で止まる。
 シャザムは汗の雫(しずく)が浮いた顔をあげた。
 歓喜に歪んだイルヴァンの笑いが、彼を見下ろしていた。
「いよぉ」
 飄々とした口調で言うと隻眼の商人はシャザムの肩に足をかけ、軽く蹴った。
 たいした力を込められたわけでもないのに、抵抗できない。シャザムは為されるまま仰向けに倒れ込んだ。再び熱い塊が喉の奥で弾け、唇の端から生温かい血が片頬を伝う。
「招待に応じてくれたんだなぁ、馬鹿正直によ。俺は嬉しいぜ――おい。聞いてんのかいシャザムさんよ?」
 声とともに、小さな足がシャザムの胸――刺さった矢のすぐ横あたりを踏みつける。
 ――貴様……!
 シャザムは叫んだ。叫んだつもりだったが、むろん声にはならない。可能なのはただ、微かに顔をあげてイルヴァンを睨みすえることだけだ。
「聞いてんのかっつってんだよっ! あぁっ?!」
 足に強い力がこもった。みしり、という骨の軋む音と、肺から血と空気が抜けてゆく音とが、シャザムの耳にはっきりと届く。
「――か――ぁっ!!」
「何だ、ちゃんと返事ができるじゃねえか」
 嘲りそのものの笑いを浮かべながら、イルヴァンはシャザムの胸に突き立った矢に手をかけた。
「痛いだろ? 抜いてやるよ」
 言葉と同時に、シャザムの胸を灼熱の痛みが貫く。イルヴァンがまるで草でも抜くかのように、刺さった矢を強引にねじり抜いたのだ。
 声を成さぬ絶叫が、鮮血とともにシャザムの口からほとばしった。
 遠退きかける意識を懸命に留める。だが、胸に深々と穿たれた孔から己の命が刻一刻と流れ出していくのははっきりと判った。胸が脈うつごとに、己の血潮が体内から失われてゆく様が。
 ――死――
 先程までは意識の隅にものぼらなかった言葉が、胸の奥底を冷ややかによぎった。
 駄目だ。
 シャザムは胸中に、激しくかぶりを振る。
 死ぬわけにはいかない。
 ここで自分が果てたならば、ハルシアは――
 だが、思いとはうらはらに全てはゆっくりと、だが着実に深淵の闇の中へと落ちこんでゆく。
「おっと」
 シャザムの意識を引き戻したのは、皮肉にもイルヴァンの声だった。衣の襟首を掴まれ、強引に半身を引き起こされる。
 すぐ目の前に、歓喜に歪んだ顔があった。
 刀さえ――腰の刀さえ抜くことが叶うならば、こんな男は一刀のもとに斬り斃(たお)すことができるものを。両腕はまるで己のものではなくなったかのように、力なく垂れ下がったままだ。
「まだ寝てもらっちゃ困るぜ。丸二年もこの日を待ち焦がれてたんだ、俺にゃあもうちょっとゆっくり愉しませてもらう権利がある。な、そうだろう?
 いい目だなあ。今すぐ俺をぶった斬りたいか? ひゃははははっ、わかる、わかるぜぇ。俺もずうっと同じ気持ちでいたんだ!」
 隻眼が、熱病患者のそれにも似た奇妙な光を帯びてシャザムを見据えた。
「――ところで、見てくれたかい? 俺が壁に書いたあれを」
 シャザムは応えない。応えることができない。もはや、憎むべき目の前の敵をはっきりと睨みすえることすらも――
 喉の奥で、ごぼごぼと泡の沸くような音がする。
――すまない――ハルシア。俺は――
「ああ書いたはいいけどよ、俺も迷ったのさ。あんたのいちばん大切なものってやつがあのハルシアとかいう小娘のなのか、それともあんた自身の命なのかってな。
 ――そこで、だ」
 イルヴァンは顔を近づけると、声を低めて囁いた。
「……両方をいただくことに決めたってわけさ」
「――――」
 その言葉の意味を一瞬測りかね、シャザムは虚ろな視線を目の前の男に向ける。
 イルヴァンの痩せた顔に浮かぶのは、満悦の笑み。毒を仕掛けた者が、その毒が相手の中にしみ込んでいくのをじっと待っている――そんな表情だ。
 はたして、その毒は数秒をおいてシャザムの胸に届いた。
「――――!!」
「へへっ、そうさ。ここでまずあんたの命をいただいて、その次に――なっ?!」
 イルヴァンの笑みは、言葉の途中で驚愕に凍りついた。
 猿にも似たすばやさで、商人は後ろに跳びずさる。外套の腹のあたりが真横に浅く斬り裂かれていた。
 シャザムにも一瞬わからなかった。自分が今、何をしたのかを。
 ただ、気がつくと右の手は抜き身の刃の柄を握り締めていた。
「……化けもんだな、てめえ。そんなにあの女が大事かよ」
 嘲りと憎悪が入り混じった笑みを片頬に浮かべ、肩を竦めてみせるイルヴァン。その顔を睨みすえたまま、シャザムはゆっくりと身を起こした。
 ――この男を――
 刀を持つ腕が、床を踏みしめる足がすでに力を失っているのがわかる。
 起きあがれるだけの命の灯など、もはや残ってはいないことも。
 だが、それでも。
 ――この男を、ハルシアのもとに行かせるわけにはいかない――
 シャザムは、刀を支えにかろうじて立ちあがった。
「――面白れぇ。来いよ」
 挑発の声とともに隻眼の商人は弓を投げ捨て、自らの刀に手をかける。
 震える刃の切っ先を、シャザムは目の前に立つ男の胸元に向けた。
 ――この男だけは、今この場で――
 数瞬の沈黙。
 礼拝堂の屋根に啼く、鴉(からす)の声が薄闇に響いた。
 刹那――
「――――――ぁっ!!」
 声なき気合とともに、シャザムは瞬時にしてイルヴァンの目前に跳びこんだ。
 ――この場で、斬る!――
「なっ?!」
 驚愕に凍てつくイルヴァンの顔。シャザムは疾風(しっぷう)のごとき刃を疾らせる。
 持ちうるすべての力を込めた一閃が、商人の胸元をまともにとらえた。
 
 
 
 ――――ぃぃん。
 打ちあわされた鋼の残響が、廃墟に長く尾を引いた。
 ハッサンの刃はすんでのところで弾かれ、真横に大きく泳ぐ。その隙を狙って少女は、彼の胸元にすばやくもう一本の短刀を突きいれてきた。
だが、ハッサンは斜め後ろに跳びずさってそれをかわす。
 剣に迷いがある。ハッサンはそう見てとった。だが、そうでなければ今の突きは己の胸を貫いていたやもしれぬ。
 目の前の娘――名をハルシアと聞いていた――確かに砂の部族の娘たるに相応しい使い手のようだった。刃を合わせることとなったときは十分に用心するように、主人であるイルヴァンに命じられていたのだ。
 間合いをとって、ハッサンは娘の姿をあらためて見やった。
 編まれた漆黒の髪が、夕風の中に泳ぐ。深く澄んだふたつの瞳は凛々(りんりん)たる光を湛え、されど憂いと迷いに揺れている。
 ――いいか、もし妙な動きをするようだったら捕らえておけ。手足の腱ぐらいは斬っても構わねえ。ただ、顔にゃ傷をつけるなよ。あの小娘は――ハキム様へのいい貢ぎもんになる。
 イルヴァンが自分に言い含めた意味を、ハッサンは解することができた。
 ただ、それはあくまでも頭ででのことだ。
 密偵と暗殺を手掛ける感情なき道具として育てられ、施術により男性としての機能を奪われている。それゆえ彼は女性に対する情や欲を、美しいと思う感情を欠いていた。
 命が下ったうえは、目の前の娘もその処置の対象でしかない。
 ハッサンは刀を構えなおした。
「――退いては、もらえませんか――」
 楚々たる顔に悲しみの色を宿して、少女がそう訊ねる。
 応える代わりに、ハッサンは地を蹴った。矮躯と強靭な脚を活かして相手の懐に跳びこみ、鋭く刀を一閃させる――それが彼の剣術だ。
 これまで躱したものなど片手の指に満たないその一撃を、されど少女は身体を横に泳がせてやりすごす。
 交差する銀光。舞いあがる砂煙。
 位置を入れ変えたかたちで、再び二人は対峙した。
 少女は再び刀を構える。強い意志の光を瞳に宿して。
 何らかの迷いがあるのは、陰りあるその表情からも見てとれる。だが目の前のこの少女は、ハッサンがこの数日監視を続けていた少女とはまるで別人のようだった。
 何が彼女を変えたのか。いかなる決意がその瞳の奥に秘められているのか――それはハッサンのあずかり知らぬところだ。ただ、このような表情をした者がときにその実力を遥かに超えた剣を振るうことを、彼は経験から存じていた。
 ――あれを……使うべきか……。
 ハッサンは心中にうなずいて、空いた左の手を懐に忍ばせた。
 下段に刀を引き、蝗(いなご)のごとく跳躍する。
 両手の刃を、護りの形に構える少女。その、胸元を目掛けて――
銀光が飛んだ。
ハッサンの手より放たれた、鋼の針が。
「――――!」
 一瞬表情を凍らせて、少女が咄嗟(とっさ)に刀を振るう。甲高い音とともに針は弾かれた。
 だが、それによって生じる隙こそがハッサンの狙いだ。守りを欠いた少女の目の前に、彼は一瞬にして滑りこむ。
「……終わりだ」
 ぼそりと呟くと、ハッサンは刃を走らせた。
 突き上げるような鋭い一撃が少女の両脚を深々と切り裂く。鮮血が霧となって風に散った。
 ――いや――
 違う。
 それは残像と陽光の織り成す、一瞬の幻に過ぎない。
 ハッサンの刀は虚空を斬っていた。
 少女の姿は忽然と彼の視界から消え失せたのだ。
「――ぬう」
 唸りとともに彼は視界を巡らし――そして見た。
 すぐ背後に建つ、崩れかけた壁の上。外套を風にはためかせ、落日を背に佇む少女の姿を。
 一瞬にしてあの位置で跳んだというのか。並の脚力ではない。
「退いては、もらえないのですね――」
 唇が、呟きを紡ぐ。刃のような哀しみを宿した、静かな呟きを。
 両の手に握られた短刀の切っ先が、陽光を照り返して紅に輝いた。
 刹那。
 少女の身体は宙を舞った。
 白鳳を想わせるしなやかな跳躍。広げた両腕はまさしく、刃をはらんだ死の翼だ。
 砂の部族の女たちに伝わる、舞いを基盤に置いた剣術。
 空中の娘とハッサンとの視線が、一瞬、交差した。
 吸い込まれるような瞳がそこにあった。
 幾多の迷いを、憂いを沈め、それでもなお明空のごとくに澄みわたるふたつの瞳が。
 ハッサンは心を持たぬものとして育てられた。
 女性に対する情や欲を、美しいと思う感情を欠いていた。
それでも――
 この瞬間、彼は目の前に舞うこの娘に惹かれた。
 美しい。そう思った。
 それが隙となった。致命的な隙となった。
 すれ違いざまに放った少女の一閃は、ハッサンの脇腹を深々と薙いでいた。
 


 荒い息をついて、男は仰向けに地に倒れている。夕の陽が照らすその顔には、もはや死の影が濃い。
 たった今己が斬り倒したばかりのその男の顔を、ハルシアは見下ろしていた。
 刀を握る両の腕が小刻みに震えるのを、自分でもどうすることもできない。刃が相手の肉を抉った時にてのひらに伝わった感触が、そのまま全身にまとわりついているかのようだった。
 男は依然として無表情のまま、じっと虚空を見つめている。脇原の傷から刻々と流れ、砂の上に染みを拡げてゆく鮮血。それに比例するように、命の色を失ってゆく顔。
 半開きになった唇から、苦しげな息が洩れる。
 目を逸らしかける自分を、ハルシアは必死に抑えていた。
 刃を交え、そして相手を斬った以上――闘いの責は果たさなければならない。
 血に濡れた刃を、倒れた男の上にかざす。
 部族のなわらしだった。
闘いに勝ったならば、速やかにその相手に止めを刺すこと。
 無用の苦痛を与えぬことは、刃を交えた者に対して為さねばならぬ礼儀だ。
 だが、ハルシアの腕は動こうとはしなかった。刃の先だけがただ、狂ったように震えている。
 できない、そんなことは。動けなくなった相手の胸に、刃を打ち込むなど。
 ぎゅっと目をつぶり、小さくかぶりを振る。
 その時だ。
 倒れた男は苦しげに喉を鳴らすと、激しく咳こんだ。濁った泡となった血が、唇の端からあふれて頬を伝う。
 ハルシアは身を震わせて、再び男を見た。
 彼の唇が微かに動く。紡がれた声なき言葉を、ハルシアは確かに読みとった。
 ――殺せ、と。
 息を止め、てのひらが痛むほどに刀の柄を握り締める。
 わたしは、卑怯者だ。
 決めたはずではないか。罪の道へと堕ちることを。
 その目的のためにここで刃を交えたことすら、もはや罪なのだ。それなのに。
 それなのに、止めを刺すのは嫌だなどという偽りの善をもって、このひとの苦痛をいたずらに引き伸ばしている。
「――――」
 ハルシアは刃の先を、静かに男の胸元に定めた。
 やらねばならない。
 これから――この後に己が犯そうとしている罪の道は――
 ここで迷っているようでは、進むことはあたわない。
 ハルシアは大きく息を吸い、かすかに刀を引いた。それを目にしてか、男は祈るように瞼を閉じる。
 一瞬の、果てしなく長い一瞬の静止のあとで、ハルシアは刀を突き込んだ。
 断末魔の声はなかった。痙攣(けいれん)が柄を通じてハルシアの手に伝わったかと思うと、男は溜息のように空気を吐きだしてそれきり動かなくなった。
 ――ごめんなさい――
 胸の中で、ハルシアは呟いた。
 ――ごめんなさいごめんなさいごめんなさい――
 解っていた。謝罪すら偽善に過ぎないことは。
 だがそれでも、わきあがるかすれた呟きを止めることはできなかった。
 ――どこか遠くで、風が哭(な)いている。



 ――そんな――
 揺らぎかける意識の中、シャザムは呆然と目の前の男を見つめていた。
 渾身の力を込めた斬撃を腹部に受けながら、倒れることなくそこに立つイルヴァンの姿を。
「く――」
 痩せた顔を歪めて、隻眼の商人は喉から乾いた声を洩らす。それはすぐに、耳障りな哄笑となって弾けた。
「く――ははっ、ひゃははははっ!」
 ――そんな、馬鹿な――
 絶望が全身の力を奪ってゆく。シャザムは地に膝をついた。剣を支えにしなければ、そのまま倒れてしまいそうだった。
「――いや、今のは効いたぜ。用心してこいつをつけてなけりゃ、そのままお陀仏だったかもしれねえなぁ」
 得意げに言うと、イルヴァンは斬られた胸の辺りを拳で叩いてみせる。こん、という不自然に硬い音が響いた。
 刀を受けた衣服の裂け目が開き、その下から鈍い銀色の輝きがのぞく。
 帷子か、それとも薄型の胸あてか――。
「いいだろ、西から仕入れた特注品だぜ。あんたみてぇな危ねえ奴とやりあうんだ、ちっとは用心しねえとな。心中なんざ御免こうむるし、第一――」
 隻眼をぎらりと光らせ、イルヴァンは口元だけで凄絶な笑みを浮かべた。
「俺にゃあまだ、愛しのハルシアちゃんをお迎えに上がるってぇ重要な役目が残っているからなぁ」
「――――っ!」
 怒りが震えとなって全身を駆け廻った。
 だが、先程のような奇跡はもはや起きはしない。剣を振りあげようとしたその瞬間、支えを失ったシャザムの身体は己の血溜りの中に倒れ伏した。
「へっへっへ、いい様だなぁシャザムさんよ。ま、そう気張るなよ」
 柄を握る手をイルヴァンが踏みつける。ぎりっ、という骨の軋みとともに、剣はシャザムの指から零れた。
「何もあんたみてぇに命を取ろうってわけじゃねえぜ。あの娘はこれから、ハキム様の館でそりゃあ大切に飼われるんだ。嘘つきな野郎の側にいるより、幸せってもんかもしれねえよなぁ!」
 そんなことはさせない。
 お前を、ハルシアの元には行かせはしない。
 胸中に叫べども、シャザムの身体は動かなかった。先程までは熱かった傷口が、今はやけに冷たく感じる。
 無力だった。
 最愛の少女を牙にかけんとする獣を前に、彼はもはや何をすることもできなかった。
「――さて」
 イルヴァンは満足げに呟いて、ゆっくりと踵を返す。
「名残り惜しいが、そろそろお別れってやつだ。これから酒場で祝杯でも挙げて、そのあと仕上げに取りかからせてもらうぜ。
 ハルシアちゃん、きっとお前が帰らねぇんで心配してんだろうなぁ。そこで俺が、あんたがどこでどうしてるかを親切に教えに行ってやるってわけさ。え? ご機嫌な筋書きだろ?」
 おどけたように喋りながら、彼は扉のほうに歩いていく。
 ――待て――
 シャザムの叫びは、むろん声にならない。
 血臭に満ちた息が、ひゅるひゅると胸を抜けるだけだ。
 ――お前を、ハルシアのもとには――
「止めは刺さねえぜ。そこで、じっくり短い余生を楽しむんだなぁ」
 イルヴァンが扉に手をかけ、開いた。細長く切りとられた夕陽が礼拝堂の中に差しこみ、刹那、全てを紅に染める。
 ――ハルシア――
 軋みながら、扉が閉じる音。
 礼拝堂の中が再び薄闇と静寂に覆われる。
 そして――
 シャザムの意識もまた、深い闇の底へと沈んでいった。




To be continued……