------2000年 12月 27日放送・第3回------
野明:最初にお詫びです。プロデューサー綾瀬がサボっていたせいで、放送がされなかった上に、ラジオドラマも前編と後編の間が2ヶ月も空いてしまったことを、綾瀬に成り変わってお詫び致します。
遊馬:すまん。
綾瀬:いや、ほんと。申し訳ない。
遊馬:あ、てめっ!!
野明:さっそく、ラジオドラマ後編をお楽しみ下さい。
綾瀬:ドラマの後は、久しぶりに『XIII』情報です!
特別ラジオドラマ
クラブマン・ブルース 〜 後編 〜
執 筆 : 雁 田 狼
“発砲”という刺激的な言葉に気を惹かれたのか、2号機は固まったままだ。ま、撃たせる訳にも無茶させるわけにもいかんのよね。
『隊長?』
熊耳が隊内無線で聞いてきた。指揮車間通話に切り替える。
「逃がすわけにもいかんしなぁ。イングラムじゃ泥濘地はキツイし。太田も押さえにゃいかんし、増援もすぐに来るでしょ」
『しかし、発砲させるのは』
「アレ、固いよね」
『クラブマンが、ですか?』
困惑する熊耳の顔が、浮かんでくる様な声だ。
「輸出用はそうらしい。それに、脚も強かったしなぁ。確か、一本くらいむしっても、平気で動けるよな、アレ」
『はい。出力もケタ違いです。2号機単機では押さえきれないでしょう』
「となると、エンジンつぶすか、パイロット脅すしかないよな。エンジンも固ければ操縦席は大丈夫かな、と思うんだが」
『少々、不穏当な発言かと思いますが』
「だから、太田には撃たせられん。脚以外は、な。それに新車の盗難車な訳だし、極力壊したくないのよ。本当のトコ」
『わかりました。太田巡査は、私が説得します』
「お願いね」
“戦車の中では死にたくない”って矢野徹だったか司馬遼太郎だったか。四脚レイバーって、やっぱり戦車だよなぁ。無線を待機に戻しながら、古い話を思い出した。
砲弾を喰らうと、装甲と内装の破片が中で飛び散って、とにかく酷い有り様らしい。軽量化の為にセラミックとエンプラの塊になっているレイバーなら、まだマシか。腰をつぶすか片足にすればおしまいの2脚レイバーと違い、4脚は当て所を選べない。下手すりゃ操縦席まで串刺しになる。内装も、普通の建機と変わらない。つまり、撃ちたくても太田には撃てない。
戦車みたいな軽自動車、か。なんだかなぁ。
指揮車間無線の隊内呼び出し音が鳴った。交信スイッチを入れ、マイクを取る。
『隊長、篠原です。今、搬路入り口に着きました』
「おー、良く来た。そこで1号機を起こして、静かに入って来いや」
『了解。キャリアはどうします?』
「静かに入れろ。2号キャリアの右後方に停止、第一小隊来るから、道は空けといてね」
『なんか、追い込み漁みたいですね』
「んー、勢子が暴れて逃げられる寸前だがな。じゃ、頼むわ」
『了解』
「あ、篠原、篠原」
『どうかしましたか』
「あのさ」
『はい?』
「いや、さ」
『なんッスか』
「えーと」
『はぁ』
「煙草、持ってない?」
『たいちょおぉぉ!! 今そんな事言ってる場合ですかッ!!』
「……ごめん」
結局、クラブマン・ハイレッグは、太田の2号機によって脚一本をもぎ取られ、泥地にはまった所で、泉の1号機がエンジンカバーを剥ぎ取り、電磁警棒でトドメを刺した。
雨が上がった。雲の切れ間から日が差しているが、遠くを見ると霞んでいる。また降り出しそうだ。俺は上げていた視線を戻した。
篠原の輸出担当課長代理さんとやらが、今にも泣きそうな顔で、第一小隊の手で搬出されていくクラブマンを見ていた。本当に、ご愁傷様。
その横で、恐れを知らぬ俺の可愛い小隊員達が、聞こえるように論評している。少しはメーカーさんが可愛そうだと思わんのかね、特に篠原。
「ねぇ、なぁーんで、あんなにバカ強いわけぇ?」
「だから、俺に聞くな、と言うとろーが!!」
「2号機だけじゃ、押さえられんかった。泉の言う事もモットモだ」
「輸出用、だからよ」
ナイスだ熊耳。俺は信じてたぞ。
「それに前から思ってただけど、クラブマンって、何に使うの?」
「そ、それはだな……」
門前の小僧、習わぬ経は読めぬ、ってか。
「あんな体じゃ、普通の工事現場じゃ使えないよねぇ」
「だから、何で俺に聞く!! それぐらい自分で調べろよッ!!」
「不整地等がメインですね。車体のフックを使い牽引、オプションパーツを使って資材運搬、となってますね」
進士。車載端末をわざわざ持ち出さなくても良いのに。あんなに重いの肩から下げちゃって。まぁ、好き好きだけどさ。
「ふーん。腕が無いから物も持てないし、それ位にしか使えないんだ」
「お前ね、勝手な想像で、汎用レイバーの用途を限定するじゃないの」
「だったら何に使うんだよぉ。遊馬の会社の製品でしょー」
「親父の会社、だ。何度も言わせるんじゃないの」
「知らないだけじゃないの?」
「知ってても、不勉強なレイバー乗りに教える義務は無いッ。自分で勉強しろッ!!」
「けちぃ。遊馬のケチィ。ぶーぶーぶー」
あーあ。まったく何言ってんだか。
「話はそれ位にして、レイバーの勉強は署に帰ってからにしましょう」
またまたナイスだ、熊耳。俺は信じてるぞ。
二課に戻る途中、隊内無線でさっきの話題が再燃した。篠原重工への良からぬ風聞が進士の口から漏れるに至り、俺の信じていた熊耳までが、キツイお言葉を乱発してしまった。おかげで士気はガタ落ちだ。熊耳、俺は信じていたのに。とほほ。
こんな時は、先に帰った第一小隊が羨ましくなる。煙草より先に、進士の胃薬でも貰わんとなァ。
結局、そんな雑多な事に気を取られ、二課に着くまで、煙草を切らしていた事を思い出せなかった。買出しが出るまで、禁煙決定、だ。辛いなァ。
外は未だ雨。気分も沈む。カニは好きな俺も、クラブマンとやらが嫌いになりそうだった。
了
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野明:はい、お楽しみ頂けたでしょうか。
遊馬:確かにクラブマンとかピッケル君とか、使い道に困るよなぁ。
野明:ええ、そんなことないよう。それに、かわいいじゃん。
遊馬:おまえなぁ。なんでも『かわいい』で片付けたらいいと思ったらいかんよ。
野明:いいじゃん。アシモ君だってかわいいよ。ソ○ーのやつはあんまり好きくないけど。
遊馬:あれ、なんでだよ。あれだって結構かわいいじゃん。
野明:だって、なんか・・・・って、それどころじゃないよ。遊馬。
遊馬:なんだよ。
野明:ここ、ここ。このサイト見てよ。
【TOPIO's Homepage】(古川登志男氏プライベートサイト)
【SF Online 『SFアニメ特集2』】
遊馬:どれどれ。
野明:古川さんのプライベートサイトなんだけどね。最近の仕事の紹介のところに『「機動警察パトレイバー」(篠原遊馬 役)劇場用第3弾』って、書いてあるんだよ。
遊馬:あ、ほんとだ。
野明:ここにこうして書かれているってことは、もうすでにアフレコが始まっているんじゃないのかな?
遊馬:え、もうそんなに出来てるってことか。それ。
野明:ん〜、ぜんぶ出来ているかは微妙だけど、アフレコが始まっている可能性はあるよね。
遊馬:それに、2つ目のサイトの最後の方の杉田敦氏(バンダイビジュアル プロデューサー)の担当作品リストの一番最後に、『2001年 機動警察パトレイバー XIII(仮タイトル/劇場・制作中)』って、書いてあるじゃんか!
野明:そう、そうなんだよ。
遊馬:じゃぁ、あの来年いよいよ公開されるっていう噂は、本当ってことか。
野明:可能性大だね。
遊馬:そうか、いよいよ公開されるのか。長かったなぁ。
野明:3年以上前から、話だけはいろいろと出てたからね〜。
遊馬:来年が楽しみだな。
野明:そうだね。夏に公開ならそろそろ正式なアナウンスがされるかもしれないね。
遊馬:新年早々、いいニュースが聞けるかも知れないな。
◆◇◆ 次回予告 ◇◆◇
ついに『公開』の噂の真実味をおびてきた『PATLABOR XIII』
ちょっとした情報でも、見つけ次第報告する予定です。
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