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シェフの気まぐれ不定期連載 萌え之譜・傾向と対策編

第一回 『TSFヴィジュアル世代へ向けて』


 いわゆる性変化フィクション(神話的性転換)を取り扱った一連のサイト。
 性変化フィクションのことを本稿ではサイト「おふび〜つ」等での慣例に合わせて「TSF」と呼ぶことにします。TSFの定義や、性変化フィクションのジャンル呼称をどうしたらいいのかという問題はややこしいので棚上げにしておきます。
あと今回あまり推敲してないんで読みづらいです。覚悟しろ! じゃない、覚悟してください。ごめんなさい……。

■ 絵師さん主導のTSFサイト ■

 さて、ここからが本題。
 TSFサイトに関して、昔から目立っていたひとつの傾向として、「イラスト中心のサイトが少ない」「絵師不足」というものがあります。イラスト全般というより、アニメ・コミック調のイラスト(これを「同人系の絵」と呼ぶことにします)を描く人が少ない。
 サイトの方向性によっては、あまりイラストを必要としなかったり、同人系の絵が似合わないところもあります。が、TSFサイトの多くがアニメ・コミック文化の影響を受けたサイトなのにも関わらず、それらのサイトの数に見合うほど同人系の絵師さんが現れていないように思います。というより同人系の絵師さんが中心になって立ち上げたサイトが少ないといったほうがいいでしょうか。
 少年少女文庫等の投稿で活躍して御自分の小説サイトを開くに至る文章書きさんが多数いるのに対して、そういう形でイラストサイトができた例ってあまりないんです。過去に一〜二ケースあるかないかですね。

 本稿では、イラストの中でも特に同人系の絵に話題を絞ることにします。アート的なイラスト、リアル調のイラストを描く絵師さんは創作系サイト全般にわたって貴重な存在ですが、今回は考察の対象外ということで。
 で、TSFサイトでは、大雑把な印象としてイラスト作品を発表する人の割合が、他の同人的なジャンルと比べて少ないと思うのは私だけではないはずです。
 「眼鏡っ娘萌え」「メイドさん萌え」といった萌え属性に比べて、TSFという対象が記号的なビジュアルでは表現できないのがひとつの理由でしょうか。

■ コミックマーケットの重要性 ■

 ここで一端、話の目先を変えます。
 TSFは、コミックマーケットなどネット外の創作の世界であまりメジャーではないです。……というよりハッキリ言って非常にマイナーな存在だというのが現状ですね。これは多くの人の共通見解ではないでしょうか。
 ネット上で現在はある程度盛り上がってるTSFの世界ですが、同人的な絵師さんが少ないので、どうしてもその盛り上がりがコミケの同人誌マーケットにまで波及しません。
 コミックマーケットでの盛り上がりをここで重視しているのは、コミケでのトレンドが、そのまま商業コミックの世界にフィードバックされるからです。商業コミックの影響力の大きさは、オンライン創作や他のペーパーメディアの比ではありませんね。
 そんなわけで、同人誌マーケットにおいてTSFがある種のジャンルとして根付いてほしいと私は常々考えているわけです。業界用語でいうところの「萌え属性」という代物があるんですが、そこそこメジャーな「萌え属性」としてTSFが認知されるようになるのが理想です。

■ 文章と絵の格差 ■

 インターネット上でのTSFの盛り上がりがネット外の同人界にまで伝わる条件というものを考えると、やはり絵師さんが中心になって盛り上がってるTSFサイトがないときついだろうなあ、と思うのです。
 コミケにももちろん同人小説ジャンルはありますが、男性向け同人コミックに比べてその規模は無視していいほど小さいといえます(ちょっと極論)。男性向け同人コミックは、中堅サークルで二〇〇〇部ほど刷るようですが、小説サークルの本だと、一部の人気ある商業作家のコミケ出品を抜かせば、五〇〇部も刷れってはければ御の字といったところではないでしょうか。無名サークルが文字オンリーの小説を売ったとしたら、たとえテキストが素晴らしかったとしても、たかだか一〇〇部売るのに四苦八苦するはずです。少なくとも同人界では、コミック/イラストとテキストの間には、絶対的な格差が存在するということです。

 いま現在、緩やかな停滞期にあると思われるTSFの世界ですが、これがさらに飛躍的に進展発展するためには、TSFをテーマとした同人的なイラストがもっと一般的なものになる必要があるのではないでしょうか。むしろ、他コミケ系ジャンルを眺めてみると、萌えるイラストを発表してるCGサイトがそのジャンルをリードしてるというパターンが多いです。TSFのサイトにしても、そういうふうにイラスト中心で勝負するサイトがもっと出てきたらより面白くなりそうです。

■ 人材が流れる ■

 ところで、TSFを描く絵師さんが少ない理由は、ひとつには絵師さんがTSFよりもメジャーな題材を選んでるからではないでしょうか。
 TSFを嗜む絵師さんがたくさん出てくるためにはどんな条件が必要か。
 いろいろな意見があると思いますが、私は「金になる」ことが肝要ではないかと考えます。
 これは、同人誌マーケットと連動した話です。
 アニメやゲームの二次創作にしろ、「メイド」「眼鏡っ娘」などの属性萌えにしろ、これらのうち人気のある部門は、同人誌マーケットで儲かるのです。すでに述べましたが、男性向けの人気ジャンルなら、同人誌で二〇〇〇部というのはありふれた数字です。これなら本が完売したときの純利益が数十万になることもあるでしょう。
 もちろん、これだけの数字を出すにはそれなりの絵の水準が求められます。一万部も刷るような大手が存在する一方で、一〇〇〜二〇〇部程度のいわゆる「ピコ手」サークルも大量に存在してるわけです。ですが、この明確な報酬つきのヒエラルキーがあるからこそ、「もっと上手くなりたい」「もっと人気を得たい」と向上心のもとにもなるし、同人活動の大いなる動機付けともなっているのでしょう。
 同人活動に金勘定を持ち込むなというストイックな価値観があるのも理解できますが、コミックマーケットの成功はひとえにフリマ的な個人売買の醍醐味なくしてありえなかったはずです。私はプロアマ関係なく創作行為が金銭に変換できるのはいいことだと思っています。「自分の作品をお金を出してまで買ってくれる人がいる」と確認できる点も金銭が絡むことのポジティブな側面ですね。

■ TSFと同人マーケット ■

 少々話が逸れました。
 絵師さんがTSFよりももっとメジャーな題材を選ぶという話の続きです。これはつまり、ある程度以上のレベルに達した絵師さんなら、TSFなんて描くよりもメイドさんを描いたほうが金にもなるし(それも馬鹿にならないほど)、評価もされるということなんです。なぜなら同人誌マーケットで「メイドもの」は認知度の高いジャンルですから。
 と、ここまで読んで勘の良い人なら、話が「鶏が先か卵が先か」になっているのに気付いたことと思います。TSFが同人マーケットでマイナーだから絵師の人材が流れない、人材が少ないから同人マーケットでいつまでもマイナーなまま……。

 この状況を改善するのに有効な方法はあるでしょうか。
 まず同人マーケットにおける「買い手」の側からアクションを起こすことはできるでしょう。TSF的な題材を扱った同人誌を積極的に買うようにすることです。「TSF題材=売れる」という構図を作り上げることです。これは同人に限ったことではないですが。まあ、各人の地道な努力あるのみといったとこでしょうか。
 あるいは別なアプローチ。
 同人マーケットの特性に合う形でTSFという題材を噛み砕いて、ジャンルとしての浸透を図るやりかたです。私の頭にあるのは、女性向けアンソロジーコミック「中華演義選(15)」です。これは少年ジャンプ版『封神演義』を題材にした男性キャラの女性化ネタパロディのアンソロです。女性向け同人の世界では、アニメ等のパロディマンガで「やおい」カップルの片方を原作設定をねじ曲げて女の子にしてしまう手法が存在してます。パラレルワールドで最初から女として生まれてたとして描く場合と、薬や魔法などで一時的に性転換してしまう場合と両方あります。この手法は「やおい」同人界ではかなり広く見られる手法で「女体化」「ギャル化」などの名称で一定の(拒絶反応も強いけど)認知度を得られています。
 この手法を、男性向けジャンルに密輸入できないだろうか?
 そんな展望を持ってます。

■ 女性向けジャンルの手法を密輸入 ■

 男性向けジャンルにも女体化・ギャル化が定着すれば単純にそういった同人誌の数が倍になるだけでなく、非常に活発な勢いを持っている男性向けエロ創作と結びついて新しい展開もあるんじゃないかと思ってます。
 コミケでエヴァのパロディ同人が華やかだった頃。女性サークルでは少なからず「女シンジ」の登場する同人誌を出していたものです。これがもし男性の同人作家の間でも流行らすことができたら、いまごろ性別歪曲パロディはもっとメジャーになってたかもしれません。
 セーラームーン以来、同人界では男性向けと女性向けジャンルの垣根が少し緩くなってきた感があります。主に女性作家が、男性向けジャンルに進出してきてるんですね。「カップリング」なんて言葉も、もとは「やおい」業界特有のものでしたが、いまでは男性向けジャンルにもその概念が取り入れられつつあります。そんな背景がありますから「女体化」「ギャル化」の手法を男性向けジャンルに持ち込むことは不可能とはいいきれないでしょう。これから、或いは将来同人活動に携わろうと思ってるTSFファンがいたら、一度そういう方向性も検討してみてください。


(いろいろと考察が未完成ながら、いったん筆を置きます。つっこみどころ満載な論考ですね。批判や問題提起などの御意見をお待ちしてます)


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